タイのタクシン元首相の次女ペートンタン=2023年1月、藤川大樹撮影

 【バンコク=藤川大樹】タイ下院(定数500)は16日、セター前首相の失職を受けて、下院議員による首相指名選挙を実施し、タクシン元首相の次女で最大与党・タイ貢献党のペートンタン党首(37)を選出した。タイ史上歴代最年少で、女性首相はタクシン氏の妹インラック氏に次ぎ2人目。

◆保守派に妥協する場面が増えるか

 貢献党政権は親軍政党も含めた計11政党で構成され、議席数は314。下院議員493人のうち491人が投票し、ペートンタン氏は過半数を上回る319票を獲得した。貢献党の事実上の指導者はタクシン氏だ。連立政権で同氏の影響力が強まる一方、軍などの保守派は同氏を警戒していることから、ペートンタン氏を弾圧から守り、政権を円滑に運営するため、保守派に妥協せざるを得ない場面が増える可能性がある。  ペートンタン氏は記者会見で「私は自分が最高だとか優秀だと思ったことはないが、素晴らしいチームワークと成功へ向けた強い動機がある」と強調した。  ペートンタン氏はタイの名門チュラロンコン大を卒業し、英国のサリー大でホテル経営に関する修士号を取得。ホテル運営や医療サービスなどを手がける企業で働き、2023年10月、貢献党の党首に就任した。  セター政権では、文化や価値観で他国を引きつける「ソフトパワー」戦略や、国家保健制度に関する委員会の副委員長を務めた。ただ、これまでに閣僚経験はなく、経験不足を指摘する声も上がっている。

◆セター首相後継を巡り連立与党で調整

 憲法裁判所は今月14日、セター氏が4月下旬の内閣改造で犯罪歴のあるピチット氏を閣僚に任命したことを巡り、倫理的な問題があったとして解任を命じた。  連立与党の関係者らは同日夜、タクシン氏の自宅で会合を開き、いったんは貢献党のチャイカセム元法相を首相候補に選んだ。しかし、第3党のタイの誇り党と親軍政党のタイ団結国家建設党は、同氏が過去に王室への侮辱を禁じる「不敬罪」改正への支援を表明したことを理由に反対。貢献党は15日、首相候補をペートンタン氏に差し替え、連立与党は支持する方針を表明した。 

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