◆リトアニアと岐阜のつながりは「命のビザ」
岐阜県は、第2次世界大戦中にリトアニア・カウナス市の旧日本領事館で多くのユダヤ人の命を救った県ゆかりの外交官、杉原千畝(1900~86年)の「命のビザ」をきっかけにリトアニアと交流を深めている。 また岐阜大は、同国のカウナス工科大、ビータウタス・マグヌス大と協定を結び、2021年度からはリトアニアの文化や歴史などを紹介する「リトアニア学」を開講している。◆ホテルに軍人、張り詰めた空気…研究者が現地で感じたこと
講義を担当する工学部の毛利哲也教授(53)は、カウナス工科大に2010~11年に派遣されて以来、現地の市民らと交流を続ける。 ウクライナ侵攻直後には、リトアニアの友人から「ウクライナを助けなくてはいけない」と書かれたメールが届いた。以来、「ロシアによい印象を持っていないリトアニア人が多い」と感じるようになった。ウクライナのゼレンスキー大統領=2023年9月
昨年3月にはカウナスを訪れた。滞在先のホテルには軍人らの姿が目立ち、張り詰めた空気が漂っていた。「国境を接していることもあり、人々のロシアへの警戒感を感じた」という。◆義勇軍に参加した男性「大切な人を守りたかった」
「リトアニアがロシアに併合されたら、何も残らない。大切な家族や友人を守りたかった」 毛利教授を介して中部カウナス在住の技術者エドガラス・プオジュカスさん(30)にオンラインで話を聞くと、危機感が直接伝わってきた。リトアニアの国防義勇軍に参加した思いを話すエドガラス・プオジュカスさん
プオジュカスさんは2013~21年の8年間、「国防義勇軍」(KASP)に志願した。リトアニア軍を支える組織で、18~60歳の約5000人が週末に軍事訓練を受け、有事や災害時に即応する。プオジュカスさんも大学の授業や仕事の合間に訓練を受けた。 プオジュカスさんにとって衝撃だったのは、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合だ。「現代に武力で他国の領土を併合するなんて」 1990年に独立回復を宣言するまで旧ソ連の支配を受けたリトアニアは、クリミア併合を受けて15年、徴兵制の復活に踏み切った。プオジュカスさんは「当時は学生たちの反発もあったが、国防強化に理解を示す人が増えていった」と振り返った。 ◇ ◇◆駐日大使「ウクライナを勝たせなければ代償大きい」
「ウクライナ侵攻で世界は変わってしまった」。オーレリウス・ジーカス駐日リトアニア大使(45)は東京新聞のインタビューでこう強調した。 学者出身のジーカス大使は、金沢大や早稲田大に留学して日本文化などを学び、カウナスの大学で教えてきた。母国の軍事強化の流れには反対の立場だったが、ロシアによる2008年のジョージア侵攻やクリミア併合、ウクライナ侵攻で考えを改めた。リトアニアが防衛力の強化に取り組む狙いを話すオーレリウス・ジーカス駐日リトアニア大使=東京都港区の在日リトアニア大使館で
「いま、ウクライナを勝たせなければ、世界は後で大きな代償を払うことになる」。バルト三国の一つで人口約280万人の小国はいま、エストニア、ラトビアとともに2004年に加盟した北大西洋条約機構(NATO)との協力関係を深め、ウクライナ支援を強化している。NATOの求めに応じた防衛費の増額もその一環だ。◆「リトアニア単独での防衛は難しい」
在日リトアニア大使館によると、リトアニアの今年の防衛予算は20億ユーロ(約3480億円)。対国内総生産(GDP)比で2.7%の水準だが、12月末までに3%まで引き上げる予定だ。 ジーカス大使はロシアの脅威を念頭に「万が一のときにリトアニアが単独で防衛するのは難しい。国の規模が小さいのなら、なおさらNATOに貢献しなければ」と話した。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。