【シカゴ=浅井俊典】アメリカ大統領選の民主党候補カマラ・ハリス副大統領(59)は22日、中西部イリノイ州シカゴで開かれた党大会最終日の指名受諾演説に臨んだ。米史上初の黒人・アジア系女性の大統領を目指すハリス氏は「この選挙は過去の分断を乗り越え、新たな道を切り開く機会だ」と強調。「私はすべての米国民のための大統領になる」と訴え、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)打倒に向け支持を呼びかけた。

22日、米シカゴの民主党大会で、大統領候補の指名を受諾し、演説するハリス氏=鈴木龍司撮影

 両党とも党大会を終え、選挙戦は11月5日の投開票に向け終盤に突入する。

◆中間層としての思い「トランプ氏は億万長者のために闘っている」

 ハリス氏は約40分間の演説で「中間層の強化が大統領としての決定的な目標だ。それが中間層の家庭に生まれた私の思いだ」と強調した。  その上でトランプ氏を「自分自身や億万長者のために闘っている」「人工妊娠中絶の権利も奪おうとしている」などと批判。

◆トランプ大統領になれば「深刻な結果」

 「トランプをホワイトハウスに戻せば極めて深刻な結果をもたらす。彼が大統領だったときの混乱と災難だけでなく、彼が前回選挙で敗れた後に起きたことの重大さを考えてほしい」と訴え、連邦議会襲撃事件を挙げつつ危機感をあらわに自身への支持を求めた。

22日、米シカゴの民主党大会で、大統領候補の指名を受諾し、演説するハリス氏=鈴木龍司撮影

 外交分野では「中国との競争に打ち勝ち、世界における米国の指導力を強化する」「ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)を強く支持する」などと、バイデン大統領(81)の国際協調路線を踏襲し、同盟国との関係を重視する姿勢を示した。

◆「彼女は無能と弱さの象徴だ」とトランプ氏

 一方、トランプ氏は演説に合わせて自身のソーシャルメディアにハリス氏を中傷する内容を連続して投稿。「彼女は無能と弱さの象徴だ」「口先ばかりで何もしていない」などと攻撃した。  ハリス氏とトランプ氏は、9月10日に予定されている米ABCテレビ主催の討論会で、初めて直接対決する。民主党副大統領候補のウォルズ・ミネソタ州知事(60)と共和党副大統領候補のバンス上院議員(40)との討論会も10月1日に実施される。   ◇  ◇

◆会場は白い服を着た女性で埋まったが…

 中西部イリノイ州シカゴで開催された民主党大会最終日の22日、会場は、白い服を着た女性代議員らで埋まった。白は女性参政権運動など女性の権利を象徴する色で、女性初の米大統領を目指すハリス副大統領(59)の指名受諾演説を彩った。ただ、ハリス氏自身の服は白ではなく、演説でも「女性初」には特に言及しなかった。  1920年の合衆国憲法修正で女性参政権が認められた際、参政権運動の参加者が白い服を着ていたことにちなむ。会場では多くの女性らが白いパンツスーツやドレス、ジャケット、帽子などを着用。女性参政権の歴史に残る夜として、白い服を着るよう呼びかけがあったとみられる。

22日、米シカゴの民主党大会で、大統領候補の指名を受諾し、演説するハリス氏=鈴木龍司撮影

 ハリス氏は濃紺のパンツスーツ姿。米メディアによると、フランスのブランド、クロエのものだという。ワシントン・ポスト紙コラムニストのレイチェル・タシュジャン氏は、ハリス氏が落ちついた色の服を着ることで白い服を選んだ聴衆の女性たちを際立たせたと指摘した。

◆あえて「女性」を前面に押し出さず

 一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、ハリス氏が白い服を着なかったのは、「女性初」であることを前面に押し出そうとしていないことの表れだとした。  2008年と16年の大統領選ではヒラリー・クリントン元国務長官が「女性であることを利用している」などと攻撃されており、ハリス氏はこうした事態を避けるため、演説でも触れなかったとみられる。  クリントン氏は、米主要政党初の女性大統領候補となった16年大統領選の受諾演説で白い服を着用。ハリス氏も20年の大統領選で、たびたび白い服を着ていた。 

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