北朝鮮北部で発生した台風による洪水被害の視察をめぐり、金正恩総書記の行動に驚きの声が上がっている。被災した子どもたちが授業を受ける臨時施設を訪問した金総書記の席に用意されていたのは「たばこと灰皿」。また、水害現場の視察に向かうゴムボートの上でも片手にはたばこが握られていた。
片時もたばこを手離さない様子について、龍谷大学の李相哲教授に金総書記の喫煙習慣と健康状態について聞いた。
小学生の頃から喫煙か
ーー金正恩氏はたばこ好き?
金正恩氏はニコチン中毒だと韓国情報当局はみています。いろいろな証言で分かっていることは、1日80本以上たばこを吸って、夜は酒を浴びるほど飲み、不眠症にかかって眠れないと言われています。治療薬を外国で物色しているとの報告もあります。これを毎日繰り返すわけですから、体はボロボロだと思います。2023年5月に韓国情報当局が国会で報告した内容によると、体重は140~145キロあり、今年7月の国会でも同じような体重を維持してるとの報告がありました。
この数字には根拠があって、韓国の情報当局は金正恩氏の映像を特別なプログラムでスキャンして体のどの部位に新たに肉が増えたかを確認して、体重を推定しています。
ーーいつ頃から吸っている?
金正恩氏は小学校の頃からたばこを吸っていたという話を金一家に料理を作っていた藤本健二氏から聞いたことがあります。その時は誰かのたばこを隠れて吸っていたと思いますが、中学校くらいになったら堂々と吸っていたので喫煙歴は長いです。
北朝鮮には200種類ほどの国産たばこがあります。軍人たちが吸うたばこや、高級幹部たちが好んで吸うたばこ、それから一般的な人が吸えるたばこなど、いろいろなグレードがあります。ただ、金正恩氏は国産のたばこはあまり吸わず、アメリカのマルボロやイギリスのダンヒルが好きだと言われています。
たばこで「特別な存在」を誇示
北朝鮮では2020年に「禁煙法」が制定され、公共施設や教育の場での喫煙が禁止されているが、金正恩氏だけは特別扱いだと李教授は話す。
ーーかなりのヘビースモーカー?
彼は常にたばこを持って歩きます。かなりストレスがたまっていると思われ、たばこを手に持っていれば少し情緒的に安定するのではないでしょうか。娘と一緒にスポーツ観戦している時もたばこを吸っているし、歩いている時も奥さんが隣に座っている時もたばこを吸っています。今年水害地域を視察に訪れた時も、ボートの上に灰皿を置いてたばこを吸っていました。
また、水害地域の子供たちに平壌で臨時に教育を受けさせている様子を見に行った際も、金正恩氏はたばこを吸っていました。この行為について韓国メディアは「北朝鮮の法律を破っているのでは」と報じています。
ーーなぜ法律違反?
北朝鮮では2020年に「禁煙法」が制定され、公共施設や教育現場での喫煙が禁止され、吸ったら処罰するとしています。しかし彼は守っていません。北朝鮮や朝鮮民族のこれまでの慣習では、偉い人は周りを気にせずに吸えるけれど、目下の人たちは自分より偉い人たちの前ではたばこを吸ってはならないという認識があります。そうしたことから、ある意味、たばこを吸っている姿を見せることで「自分は特別な存在」ということを誇示する側面もあると思います。
禁煙法を作っておきながら金正恩氏だけは別
健康状態を不安視する声も上がる金総書記だが、場所や時間は関係なく常にたばこを吸っていると李教授は話す。
ーー北朝鮮でたばこを吸う人の割合は?
世界でおそらく北朝鮮が一番たばこを吸う人の割合が高いと思います。北朝鮮はご存知の通り、食べ物は十分でなく、統制も厳しく、娯楽もあまりないので、唯一自由で気晴らしとなったのがたばこです。そのため昔から多くの人がたばこを吸っていました。
ーー禁煙法が出来て国民は禁じられても金正恩氏は許される?
金正恩氏は何をしても周りが何か言える立場ではありません。禁煙法を作っておきながら、彼だけは写真でも動画でもたばこを手に持っています。以前、幼稚園や保育園に行ったときもたばこを吸っていたし、彼はなりふり構わず、場所や時間も関係なくずっと吸っています。
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