今大会、パレスチナからただ1人出場した陸上男子砲丸投げ(座位F55)のファディJS・ディーブ(40)。11人で競った決勝では失格となった1人を除いて最下位だった。普段は車いすバスケットボールの選手で、約1カ月前に出場が決まり、十分な準備が出来なかったが、「私は、故郷のガザの人たちの声になるためにここに来た」ときっぱりと言った。

 イスラエルへのパレスチナの抵抗闘争「第2次インティファーダ」が始まった翌年の2001年、イスラエル兵に背中を撃たれ、脊椎(せきつい)の骨折で下半身が不自由になった。高校生の時だった。しかし、9人きょうだいの長男で、「親に心配をかけてはだめだ」と大学の勉強と車いすバスケを始め、砲丸投げや円盤投げも経験した。

 ただ、ガザにはスタジアムも道具も十分にない。砲丸に似た丸い岩や円盤に似た車輪を更地で投げて練習した。肩のけがで陸上から離れると、安全な場所を求め、8年前にガザを出た。トルコなどを経て、今はパリで車いすバスケの選手兼コーチとして暮らすが、心はずっときょうだいや親戚が暮らすガザにある。

 昨年10月からのイスラエルによる攻撃で、自宅アパートが崩壊した。故郷では死者に加え、障害者も増え続ける。昨年末には弟の自宅が爆撃を受け、約半年後、遺体で見つかった。これまでに、親族17人が殺されたという。

 決勝の後、訴えた。「ガザの人々にも、夢や目標がある。他の国の人と同じように人権を守って欲しい。私たちは、同じ人間なんだ」(河崎優子)

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