ウクライナのゼレンスキー大統領は「勝利の計画」を進めている(2日、ザポリジエでの記者会見)=AP

ウクライナがロシア本土への越境攻撃に踏み切って1カ月がたち、ロシアの侵略作戦の失敗がますます明白になってきた。全領土を取り戻せるよう、米国や日欧など民主主義陣営はウクライナへの支援を強化してほしい。

ウクライナは8月6日、精鋭を投じてロシア西部クルスク州への奇襲作戦に着手した。核保有国の本土に対する地上戦はないと高をくくっていたプーチン政権のスキを突いた。東京23区の約2倍に当たる地域を支配下に置いた。

ゼレンスキー大統領は越境作戦が「勝利の計画」の一部だと説明した。プーチン大統領を交渉のテーブルにつかせるため、支配地域を「無期限に保持する」とも語った。ウクライナ領で占領地を拡大するロシアへの対抗措置であり、米欧も支持した。

ロシアにとっては大失態だ。第2次世界大戦後では初めて自国領を占領された。10万人以上の住民が避難する事態を招いた。現地を中心にロシア国内ではプーチン政権への不信も広がる。

プーチン氏は5日、ウクライナ東部での攻勢を維持するとともに、「国境地帯から徐々にウクライナ軍を追い出し始めた」と発言した。だが実際には、クルスク州で防衛線を固める大軍の排除は困難を極めるだろう。

ゼレンスキー氏は9月中に米国を訪れ、バイデン大統領らに「勝利の計画」の全容を説明する。軍事や外交、経済支援の拡大を想定しており、日米欧など各国は可能な限り協力する必要がある。

ウクライナは6月に続いて、11月にもウクライナの和平案を話し合う「平和サミット」を開く方針も示す。「この秋はきわめて重要になる」。ゼレンスキー氏はこう語り、決意を新たにした。

ゼレンスキー氏が9月に入って外相交代を含む内閣改造に踏み切ったのも、公正な和平の実現へ体制を強固にするためだ。国際社会も本土奇襲で開いた突破口を利用し、ロシアの全面撤退を引き出す好機を逃してはならない。

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