東南アジアの国々は圧倒的な経済力で安値攻勢をかける中国に対し、対抗策を導入し始めている

過剰な生産能力を抱え込んだ中国が海外の市場に活路を求めるなか、各国で中国の安値攻勢に対し防衛線を張る動きが広がっています。日本経済新聞社の英文媒体「Nikkei Asia」で8月に読者の関心を集めた記事を振り返ると、東南アジア各国の取り組みを多角的に紹介した看板企画「The Big Story」が上位に入りました。中国企業の投資を呼び込みつつ、自国の中小企業を保護・育成するジレンマを抱えています。

インドネシアやマレーシア、タイでは、越境電子商取引を通じて無税で輸入されてきた小口の雑貨や衣料品に関税や売上税を課したり、その検討に着手したりする事例が相次いでいます。

不動産不況を背景とした巨大消費市場の低迷は、周辺のアジアの国々にも影響しています。「デフレ輸出」とも言われるように、輸出品の価格を引き下げて海外市場に攻勢をかけるためです。東南アジアの企業は人員削減などの対応に追われています。

一方、各国には電気自動車(EV)など中国企業の投資を誘致したいという思惑もあります。そのためには原材料や中間財の輸入を滞らせるわけにはいかず、結果的に対中貿易赤字は拡大しています。

米国と中国の対立で中国企業が他国で製造した製品の取引も制限されるなど、国際貿易を巡る環境は複雑さを増しています。東南アジアの国々は超大国の経済の先行きに翻弄される状況が続きそうです。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 Southeast Asia pushes back on cheap Chinese imports

ライフ&アーツ ウミガメの首都、マラトゥア島

インドネシアのマラトゥア島には何もないビーチがいくつもあり、海岸近くのサンゴ礁でシュノーケリングが楽しめる=オリバー・ロウ撮影

インドネシアのカリマンタン島の東方に位置する釣り針状の形をしたマラトゥア島は地元で「ウミガメの首都」と呼ばれています。手つかずの海辺や熱帯雨林が広がり、世界で3番目に豊かな海洋生物多様性があるといわれています。カリマンタン島から高速艇で数時間かかる秘境ですが、観光客の注目を集めつつあります。

島を訪れる外国人の8割は中国人、ダイビング客が大半を占めるといいます。一方、カリマンタン島に首都を移転する計画があるため、新首都に近いリゾート地として飛行場拡張やホテル建設など観光開発の動きが出始めています。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 Maratua beckons tourists seeking low-key alternative to Bali
国際金融市場ではドル一辺倒からの脱却に向けた議論が始まっている=AP

オピニオン ドルの時代、終わりの始まり

国際金融システムにおける基軸通貨としてのドルの存在感の低下がしばしば取り沙汰されるなか、元銀行家のサティヤジット・ダス氏は、その議論には貿易と貯蓄の不均衡についての考察が不可欠だと主張します。

同氏は脱ドル化の流れは、米中対立や各国の保護主義の台頭による経済のブロック化によって、従来の貿易と貯蓄の不均衡が是正されることに起因していると指摘します。戦後の安定した秩序が乱れ、不確実性が増した時代の波を乗り切るためには、各国は投資ポートフォリオの再編成など柔軟な経済・金融政策を打ち出すことが不可欠だと述べています。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 The dollar's days as a universal reserve currency are numbered

国・地域別トップアクセス

@タイ 入国審査強化で「韓国忌避」広がる

タイで韓国旅行を避ける動きが広がっています。事前の電子渡航許可を得ていたにもかかわらず、到着時の審査で入国を断られるケースが増えているためです。今年韓国に渡ったタイ人は4月末時点で前年同期比21%減。不法滞在するタイ人の増加を受け審査を厳しくしているようです。代わりに中国や日本を訪れる人が増えています。

@ベトナム 最高指導者死去で中国化?

ベトナムの最高指導者だったグエン・フー・チョン氏の死去に伴う権力闘争を分析した記事が読まれました。後継者のトー・ラム氏は公安省出身で、幹部の中にも同省出身者が増えています。公安当局の力が強まれば、ベトナムが中国のような警察国家になるのではないかとの懸念があります。米国との関係に溝が生まれる恐れもあります。

@パキスタン やり投げで40年ぶり金メダル

パリ五輪の男子やり投げで優勝したパキスタンのアルシャド・ナディーム選手(27)を紹介しました。同選手は92メートル97の五輪新記録を出し、パキスタンに1984年以来の金メダルをもたらしました。同国ではクリケットが盛んで多くの少年たちがプロのクリケット選手を目指しますが、人口わずか4000人ほどの村で育った同選手の活躍は少年たちに新たな夢を与えています。

@マレーシア 独半導体大手が新工場

独半導体大手インフィニオンテクノロジーズがマレーシアでパワー半導体の新工場を稼働させたというニュースはマレーシアやシンガポールを中心に多く読まれました。東南アジアを代表する製造業の集積地で、地政学的にも中立のマレーシアには半導体関連の投資が相次いでいます。Nikkei Asiaでは今後も企業の動向や政府の誘致戦略を丁寧に報じていきます。

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