7月の銃撃事件からわずか2カ月後に再び発生したトランプ前大統領(78)への暗殺未遂事件。一歩手前で被害を食い止めたものの、銃を所持した男の接近を再び許した。大統領選がヤマ場を迎え、遊説の機会が増える時期に、警護体制のあり方が問い直されることは必至だ。(ワシントン・鈴木龍司)

◆地元保安当局「現職大統領ならコース全体を警護していた」

 選挙戦で全米を回るトランプ氏は週末に南部フロリダ州の私邸マールアラーゴに戻り、15日は支援者の友人らとゴルフをしていた。FOXニュースが報じた友人の証言によると、5番ホールにいた時に「ポンポン」という音が聞こえた。数秒後に付近を警備していた大統領警護隊(シークレットサービス)がトランプ氏に覆いかぶさり保護した。

トランプ前大統領(右)とメラニア夫人(2024年7月、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで)

 この時、同氏らの1ホール先を警戒していた隊員が、茂みに隠れてフェンス越しに自動小銃を構える男を発見した。隊員が発砲すると、男は現場から逃走。発見が遅れていれば、さらに危険性が高まっていた。  ゴルフ場があるパームビーチ郡の保安当局は会見で、警護隊の迅速な対応を評価しつつ「トランプ氏は現職の大統領ではないため、(警備は)警護隊が想定する範囲に限定されている」と説明。「大統領であればコース全体を包囲していただろう」とも語った。

◆民主・共和両党から憂慮や非難の声

 警護隊は7月に東部ペンシルベニア州で発生した銃撃事件後、チートル長官が引責辞任し、警備体制を強化。屋外の集会で防弾ガラスの囲いを設置するなど対策を講じてきたが、再び狙撃のリスクを招いたことに対して議会関係者からは疑問や批判の声が相次いだ。

演説するトランプ氏。大統領選が近づく中、屋内外でのイベントは活発になる(2024年7月、米ウィスコンシン州ミルウォーキーで)

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、7月の事件を巡る上院の調査委員長を務める民主党のリチャード・ブルーメンソル議員は「2件目の深刻な事件は非常に憂慮すべきで、驚くべきことだ」と指摘。AP通信は共和党の下院議員が「暗殺者の接近をなぜ再び許したのか」と非難し、説明を求める考えを示したと報じた。

◆大統領選は11月、屋内外のイベントますます活発に

 11月5日の投開票に向けて大統領選は今後、屋内外のイベントが活発化する。ニューヨーク・タイムズは、今回の事件を受け、警護の多くの課題が「未解決のままである」とし、「予測不能で暴力的な政治環境への対応がいかに困難かを示した」との見方を伝えた。

銃規制に反対してきたトランプ氏=2022年1月、米西部アリゾナ州で

 今月4日には南部ジョージア州の高校で14歳の生徒が銃を乱射し、生徒ら4人を殺害する事件が発生。豊富な資金力を誇るロビー団体、全米ライフル協会(NRA)の支援を受けて権利擁護を訴えるトランプ氏に対し、民主党のハリス副大統領(59)は規制強化を主張する。銃社会のあり方が争点の一つとなる中、その大統領選自体が銃の脅威にさらされ続けている。 

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