【デトロイト=鈴木龍司】日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡り、複数の米メディアは17日、安全保障上の懸念の審査について、米政府が日鉄の再申請を容認すると報じた。買収の可否判断は11月の大統領選後にずれ込む見通し。民主党のバイデン大統領は買収を阻止する意向だったが、USスチールなどの反発を受けて判断を延期したとみられる。

日本製鉄(資料写真)

 買収計画は対米外国投資委員会(CFIUS)が米国の安全保障への影響を審査し、懸念があると判断すれば大統領は中止命令を出すことができる。  米紙ワシントン・ポストなどによると、当初の審査期限は23日だったが、日鉄は再申請を要請。同社は近く計画を出し直すとみられ、認められれば審査期間は90日間延長される。

◆「経済的な影響を懸念、政権は方針転換」と米紙

 買収計画には全米鉄鋼労働組合(USW)が強く反発。USスチールとUSWが拠点を置く東部ペンシルベニア州は大統領選の激戦州で、労組票の獲得を狙う民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領はともに買収に反対している。一方、USスチールは買収が失敗した場合は雇用の維持が難しくなると主張し、日鉄の幹部も米政府高官と会談するなど理解を求めてきた。  ポスト紙は「取引(買収)が中止された場合の政治的、経済的な影響を懸念する声が上がったことを受け、政権は方針を転換した」と報じた。日鉄が示している追加投資計画が立ち消えになる可能性を踏まえ、投資家や地元自治体、一部の組合員も買収阻止に反対しているという。 

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