JICA=外務省所管の国際協力機構から派遣される青年海外協力隊。海外ボランティア派遣制度だ。発展途上国などでの支援や友好親善などにあたるが、その希望者の減少が、いま問題となっている。活動経験がある福岡市在住の女性が、現状への思いを語った。

アフリカのニジェールで2年間活動

「こんにちは~」明るく入院患者に声をかける女性。福岡市内の病院に管理栄養士として勤務する齊藤ちづるさん(49)だ。齊籐さんは大学卒業後、高齢患者の多い病院に就職。3年間勤めた後、青年海外協力隊の一員として、西アフリカのニジェールで2年間活動した経験がある。

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「子どもたちのためにする仕事に就きたいなって思ったんですね。全然、知らない分野に飛び込んでみようかなって」と当時を振り返る。

JICAが派遣する青年海外協力隊は、発展途上国を中心に派遣され、現地の人々と共に生活し、課題解決に貢献する活動を行う。青年海外協力隊が始まったのは1965年。2025年には60周年を迎える。これまで90以上の国や地域で45000人を超える人が活動してきた。

2020年には派遣自体がゼロに

ニジェールに派遣された齊藤さんは、子どもたちの衛生状態や栄養状態の向上に取り組む。しかし食材を手に入れることすらままならない状況だったという。

「赤ちゃんを連れて来たお母さんに、離乳食の指導をしていました。ニジェールでは伝統的に雑穀の粉をお湯で柔らかく練った離乳食をお母さんたちは食べさせていたんですが、そこに『ちょっとだけ雑草の野菜の粉を入れてみませんか』とか、『貴重品だけど卵の黄身の部分とか入れてみませんか』っていう話をしていた」と現地での活動を話す。

青年海外協力隊の派遣は、最も多かった8年前と比べると、現在はその3分の1以下にまで減少している。また、新型コロナの影響で2020年には派遣自体がゼロにまで落ち込んだこともあった。派遣を再開してからは、少しずつ回復傾向を見せているが、まだまだ途上国からの要請に応えられる人数を確保できない状況が続いている。

コロナを経ての内向的になった若者

JICA九州市民参加協力課の戸崎千尋さんは「若者が減っていることもあるかもしれないけど、やっぱりちょっと若者のコロナを経ての内向的になってきていることも原因としてはあるのかなと感じています。途上国の要請に、要請数と応募者、派遣者が応えられないとすると、やっぱりお互いのウィンウィンな関係が崩れてしまいかねない。途上国での活躍、活動というのを選択肢として持っていただけるような取り組みが必要」と話す。

「途上国を見て来た分だけ、命の重さをとても感じているので、きょう生きていることが豊かだというのは、自分がお話するとこの端々に感謝を込めて伝えていきたい」。齊藤さんは、日本に戻ってきてから現地での経験を職場で生かすとともに、小中学校で講演会を開いて世界の情勢や命の尊さについて語り続けている。

青年海外協力隊の2024年の秋の募集は10月1日から。齊藤さんも「日本とは違う、いろんな世界を見て人に出会うと視野が広がる。興味があるけど…と足踏みしている人は、是非一度チャレンジしてみてほしい」と話していた。

(テレビ西日本)

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