スリランカのディサナヤカ新大統領はIMFとの支援条件の再交渉を公約している=沢井慎也撮影

スリランカでディサナヤカ新大統領が就任した。候補者38人が乱立した21日の大統領選で既存政治の刷新を訴え、現職だったウィクラマシンハ氏らを破った。

経済危機から回復途上の同国は、国際通貨基金(IMF)の支援下で緊縮財政を敷いてきた。新大統領は支援条件の再交渉を公約する。経済再建に悪影響が出ないよう、現実的な対応を求めたい。

スリランカは過去の内戦を終結させたラジャパクサ元大統領一族が長く権力を握ってきた。ところが中国からの過剰な借り入れや非効率なインフラ投資に起因する財政赤字に、新型コロナウイルス下での観光客の激減、ロシアのウクライナ侵略に伴う商品価格の高騰などが重なり、経済運営が破綻した。2022年5月に初めてデフォルト(債務不履行)に陥った。

同7月に大統領に就いたウィクラマシンハ氏は財政再建に取り組んだ。IMFの30億ドル(約4300億円)相当の融資に加え、中国や日本、インドを含む債権国から返済繰り延べなどの合意を取り付け、深刻な外貨不足を脱した。

だが増税や歳出削減への不満、ラジャパクサ一族との関係への批判から、再選は果たせなかった。

ディサナヤカ氏は汚職撲滅や富の公正な分配を訴え、民意の受け皿となった。同氏率いる左派勢力は、国会の定数225のうち3議席しか持たない。政権基盤を強化するため議会を解散し、11月14日の総選挙が決まった。本格的な改革着手はそれ以降となろう。

貧困層の税負担軽減を唱え、IMFに支援内容の見直しを求める方針だ。ただ財政規律が緩むと国際社会からの支援の前提が揺らぐ。国内での人気取りが行き過ぎれば、経済再建がかえって遠のきかねないことを認識すべきだ。

スリランカは東アジアと中東・アフリカを結ぶ地政学上の要所に位置する。中印が影響力を競ってきたが、新政権はバランス外交を続けるとみられる。円借款供与を再開した日本は、インドとも連携し、持続的発展を後押ししたい。

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