イスラエル軍 ヒズボラへ攻勢強める
国連安保理 一致した対応打ち出せず
UNHCR報道官「人道的な大惨事といえる状況」
イスラエル軍はイランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻勢を強めていて、レバノン南部への地上侵攻とともに連日、首都ベイルートなどへの空爆を続けています。アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は複数のイスラエル政府高官の話としてイスラエル軍は3日、ベイルート郊外の地下でヒズボラの幹部らが会議を行っているとの情報を得て空爆を行ったと伝えました。幹部の中には9月に殺害されたヒズボラの最高指導者、ナスララ師の後継者になる可能性がある人物も含まれていたとしています。レバノン政府は4日、イスラエル軍による攻撃で過去24時間で37人が死亡し、150人以上がけがをしたと発表しました。一方、イスラエル軍が地上侵攻に踏み切ったレバノン南部でも双方の戦闘が激化している模様です。イスラエル軍は3日、およそ230の飛しょう体がレバノン側から発射されたと発表したほか、4日の朝早くにもおよそ20の飛しょう体がイスラエル領内に向けて発射されたのを確認したとしています。イスラエル軍のハレビ参謀総長は3日、レバノンとの国境付近を訪れ、「ヒズボラが拠点を設けることは許さない」と述べ、ヒズボラへの攻勢を強める姿勢を強調しました。
中東情勢の緊迫化を受けて、国連安保理は9月下旬以降、繰り返し緊急会合を開催していますが、常任理事国間の意見の対立も伝えられ、決議を採択するなどの一致した対応を打ち出せていません。こうしたなか、日本を含む非常任理事国10か国は3日午前、共同声明を出し、中東での暴力の連鎖を非難するとともに、すべての敵対行為の即時停止を呼びかけました。声明ではすべての当事者に対し、国際人道法などにおける義務を尊重するよう求め、民間人の保護を強く要請しているほか、外交的解決が唯一の進むべき道だと強調しています。また、イスラエルの外相が2日、国連のグテーレス事務総長を「好ましからざる人物」に指定しイスラエルへの入国を禁止すると発表したことについて、国連の安全保障理事会は3日、グテーレス事務総長を「全面的に支える」とする報道機関向けの談話を出しました。10月の議長国を務めるスイスの国連大使が談話を読み上げ、「すべての加盟国が事務総長とその職務を損なうような行動をつつしむ必要性を強調する」としています。その上で、談話ではイスラエルを名指しすることは避けながらも「特に中東での緊張の高まりという文脈において、事務総長や国連と関わりを断つという決定は逆効果だ」と指摘しました。
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所レバノン事務所のリサ・アブハレド報道官が3日、オンラインでNHKのインタビューに答えました。アブハレド報道官は「これまでレバノン南部に限られていた戦闘の影響が国全体に広がり、数日間で避難民の数が倍増した。避難所が受け入れられる人数は限られ、ベイルートでは屋外で寝泊まりせざるをえない人が多くいる。これは人道的な大惨事といえる状況だ」と話しました。また、今後、気温が下がるため屋外での暮らしは難しく、一刻も早くさらなる避難所の整備が必要だと話しました。その上で、家を追われた人に配る、毛布やマットレスといった物資について「最悪のシナリオを考えて準備をしてきたものの、急増するニーズに対応できるだけの量がない」としています。さらにレバノンには、内戦が10年以上続く隣国シリアから避難している人もいるとして、「レバノンにいる人々はもう十分に苦しんでいる。苦しみや喪失の連鎖を断ち切るためには、政治的な解決がいますぐ必要だ」と述べ、人道状況を改善するためにも戦闘の停止が求められていると訴えました。
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