9月29日、下院選の投票終了後、ウィーンでの集会で支持者の歓声に応える自由党のキクル党首=AP

オーストリアの下院選とドイツの州議会選で極右政党が相次ぎ躍進した。欧州政治は内向きの流れが止まらず、大きく変質している。だが、ウクライナ支援など重大な問題では国際的な協調を乱すことがあってはならない。

9月末に実施されたオーストリア下院選では極右の自由党が第1党になった。ドイツでも9月の東部3州の州議会選で、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が台頭した。

欧州の右傾化は2022年にイタリアで「極右」と称されたメローニ政権が発足して以降、鮮明になった。オランダでは極右主導の連立政権が発足し、欧州議会選でも極右勢力が躍進した。欧州政治の変質は深刻で、歴史的な節目と受け止めざるをえない。

極右の躍進は移民・難民問題や経済の低迷などに有効な対策を打ち出せなかった既存の大政党、特に中道派の政権与党に対する国民の不信が招いたともいえる。欧州諸国は民意を尊重し、こうした喫緊の問題の解決を急ぐべきだ。

オーストリアでは元ナチス幹部が創設した自由党に対する反発は根強く、連立協議が長引いて内政が混乱する恐れもある。連立政権を発足できたとしても、国の内外に分断を広げるような過激な排外主義は避けてもらいたい。

最も懸念されるのは、国際的な課題への対応で欧州連合(EU)内の足並みが乱れることだ。オーストリアとドイツの極右政党はいずれも欧州統合に懐疑的で、親ロシアとみなされている。

両国の極右政党がハンガリーなど他の親ロシアの国や政治勢力と連携を強め、欧州のウクライナ支援を弱めようとする恐れがある。そうなればロシアのプーチン政権を利し、世界の安全保障も深刻な危機に直面しかねない。

日本はウクライナ支援や気候変動対策、中国との関係など多くの課題を欧米と共有してきた。国際的な協調と結束が揺らぐことがないよう、EUや欧州各国への働きかけを強めてほしい。

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