11日、「勝利計画」を巡りベルリンで協議したウクライナのゼレンスキー大統領㊧とドイツのショルツ首相=AP

ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアによる侵略を終わらせるための「勝利計画」を提示し、米欧諸国と具体策の議論に入った。米大統領選が11月に迫るなどウクライナを巡る情勢は不透明さを増す。早期和平への道筋をできるだけ明確に示してほしい。

ゼレンスキー氏は10日から英国やドイツ、フランスなど欧州の主要国を訪れ、同計画について話し合った。9月下旬の訪米時にはバイデン大統領やハリス副大統領にも説明している。米欧の支援国には、計画の実行に向けて可能な限りの協力を求めたい。

同計画がロシア軍の全面撤退により公正な和平を実現する内容でなければならないのは言うまでもない。その具体的な手段や手順などの詳細はなお協議中で、米欧などの支援国との間で内容の詰めを急ぐ必要がある。

各種報道によると、同計画は①米欧による武器供与・利用の拡大②ウクライナの安全保障の確立③軍需生産の増加などに向けた経済協力④ロシアへの外交的圧力の強化――の4つの柱からなる。ロシアを追い込むためにはいずれも欠かせない条件といえる。

ただし、いくつかの柱の具体策では、ウクライナと支援国の間に溝が残っている。武器の利用拡大を巡って、ウクライナは米欧から得た長距離射程兵器でのロシア本土への攻撃を容認するよう求めているが、戦争のエスカレートを懸念する米国は二の足を踏む。

安全保障の確立では、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への早期加盟を確約するよう求めているとみられる。侵略が続く中で実現は容易ではないが、ロシアとの交渉もにらみ、NATO加盟と同等の安全を保証する国際的枠組みの検討は可能だろう。

和平への青写真が描けないままでは、攻勢を続けるロシアを利するだけだ。米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利すれば、ロシア占領地を維持したまま停戦を迫られる恐れがある。支援疲れも防がなければならない。

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