ロシアのウクライナ侵攻に北朝鮮が兵士を派遣し、間もなく戦線に投入されるとの見方が強まっている。急速に軍事的な連携を深めるロシアと北朝鮮の関係をどう読み解くか。ロシア分析が専門の韓国・統一研究院の玄承洙(ヒョンスンス)副院長に聞いた。(聞き手=ソウル・木下大資)

◆反アメリカの「聖戦」に手を貸してくれる唯一の国

 ロシアのプーチン大統領は、西側(米欧)に妥協しない文明論的な考えを持つ。中東やアジアを含むユーラシア地域で米国の存在感を弱め、「多極化した世界」を実現することを目指している。帝政ロシアや旧ソ連時代の影響圏を復活させる目標も、かねて抱いてきた。北朝鮮がこれらの大戦略に役立つという期待がある。反米のための「聖戦」に武器や兵力まで提供してくれる国は他にない。  一方の北朝鮮は、長い間米国に屈することなく国際社会の制裁に耐えてきた。これまで言い続けてきた反帝国主義、反植民地主義などの主張を、今はロシアが積極的に使っている。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は優越感を覚えているだろう。ロ朝が軍事協力を急速に深めている背景には、こうした構図がある。  両指導者のリーダーシップは似ている。正恩氏は突発的な行動で相手を当惑させたり緊張を高めたりして目的を達成する戦略にたけており、プーチン氏も同じだ。相互に影響を与えた面もあると私はみている。

◆北朝鮮の加勢でロシア国民は失望する?

 プーチン氏が大統領であり続ける限り、ロ朝関係に「まさかそこまでやらないだろう」との見立ては通用しない。北朝鮮を戦略的に重要な国として扱い、その気になれば核・ミサイルや原子力潜水艦といった先端技術、防空網システムなどを提供する可能性もある。

玄承洙・統一研究院副院長=木下大資撮影

 一方で、ロシアは北朝鮮の派兵を国としての正式な参戦とは認めず、ロシアの軍服を着た「雇い兵」として扱うようだ。  ロシアは国内向けに「西側がウクライナを支援しなければ、すぐにでも戦争は終わる」と説明してきた。今になって北朝鮮から派兵を受けて戦争を続けるのは国民を失望させる行為で、プーチン氏も公にはしたくない。北朝鮮としてはロシアと共に戦う「血盟同盟」を誇示したいが、ロシアは外部の目に触れにくい自国領土のクルスク州の奪還などで、できるだけ隠密に活用するのではないか。

◆韓国がウクライナに殺傷兵器を提供すると…

 ウクライナのゼレンスキー大統領は各国の積極的な支援を望んでいるが、韓国が殺傷兵器を提供することには慎重であるべきだ。北朝鮮と韓国が、ウクライナで代理戦争をすることになりかねない。ロシアが報復として、朝鮮半島で韓国の安全保障に決定的な打撃を与える技術を北朝鮮に提供するなど、意図しない不幸な状況が展開する可能性がある。 

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