次期大統領に就任するトランプ氏(資料写真)
首席補佐官は大統領の面会予定を調整し、各省庁との政策協議や法案の成立に向けた議会側への働きかけも担う。日本の官房長官に近い。 ワイルズ氏は、共和党の選挙コンサルタントとして長年にわたって活躍。2016年、20年の大統領選にも関わった。選挙で政治家を勝たせる手腕や組織運営能力の高さで知られる。トランプ氏は声明で「タフで頭が良く、革新的で、広く尊敬されている。米国を再び偉大にするため働いてくれるだろう」と強調した。 高官人事でトランプ氏は選挙戦での貢献や忠誠心を重視する方針。米メディアによると、「米国第一」の外交を担う国務長官には、最側近のリチャード・グレネル氏(58)や対中タカ派として知られるハガティ前駐日大使(65)らの名前が浮上している。 ◇ ◇ 米大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領は、大統領首席補佐官にスーザン・ワイルズ氏の起用を決定し、人事を本格化させた。1期目は内紛による高官の解任や辞任が相次ぎ、政権運営は混迷を極めた。2期目は多額の選挙資金を提供した実業家のイーロン・マスク氏を含め、忠誠を誓う人材を集めるとみられ、歯止め役不在を危ぶむ声が強まっている。◆ホワイトハウス運営のトップに「裏方」指名
「史上最大の政治的勝利を私にもたらしてくれた。2016年と20年の両方の選挙戦でも欠かせない存在だった」。トランプ氏は7日の声明で、ワイルズ氏の指名理由を明かした。 「チーフ・オブ・スタッフ」と呼ばれるこの職は、ホワイトハウスの運営を取り仕切る官房機関のトップで、大統領の重大決断時の最後の相談相手と言われる。駐日大使のラーム・エマニュエル氏は、2009~10年にオバマ政権の首席補佐官として政権を支えた。米ホワイトハウス(資料写真)
政治の舞台裏で汗をかくことが求められるポストに就くワイルズ氏は長年、共和党の選挙戦略を立案。大統領返り咲きの陰の立役者で、トランプ氏は6日の勝利宣言の演説中にスピーチを求めた際、ワイルズ氏が固辞すると「彼女は裏方でよいようだ」と適任とばかりに笑みを浮かべた。◆1期目には更迭、辞職が後を絶たず、暴露も
非を認めず、主張を押し通すトランプ氏は、1期目に苦い経験を味わった。 共和党全国委員長だったプリーバス氏を大統領首席補佐官に指名したが、報道官の人選や議会との調整方法で対立し、半年余で更迭。後任の元軍高官のケリー氏は規律を重んじる主義で、奔放なトランプ氏の性格と合わずに事実上解任された。国防長官ら高官の辞職も後を絶たなかった。 今回の選挙では、ケリー氏が「ヒトラーを称賛していた」と在任中のトランプ氏の言動を暴露するなど、元側近からの「報復」も続き、火消しに追われた。◆マスク氏、ケネディ氏が入閣か?
こうした経緯を踏まえ、2期目の人事は、より従順さを求めるとの見方が強い。国務長官や国防長官などの要職には、1期目で良き理解者に徹した元国務長官のポンペオ氏や元駐日大使のハガティ氏らも取りざたされている。イーロン・マスク氏(資料写真)
目玉は行政改革のポストに就く見通しのマスク氏。電気自動車(EV)大手のテスラやX(旧ツイッター)のオーナーで、トランプ氏の勝利を多額の献金でバックアップした。選挙戦の途中で撤退し、トランプ氏の支援に回った故ケネディ元大統領のおいのロバート・ケネディ・ジュニア氏も、公衆衛生を統括する要職での政権入りが有力視されている。 極左の影響を受ける政財界の一部のエリートが裏で国を操る「ディープステート(闇の政府)」の存在も主張。「一掃する」と宣言しており、高官を側近で固め、大統領の権限強化に乗り出す可能性が高い。米CNNテレビ(電子版)が「2期目はトランプ氏が提案する、極めて過激な政策を阻止する手だてが多くは存在しないことになる」と報じている。(ワシントン・鈴木龍司) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。