ロシアのプーチン大統領は10月に開いた政府会合で、経済の好調や失業率の低下を訴えた=ロイター

ロシアの国内総生産(GDP)の拡大が続いている。ロシア連邦統計局が発表した2024年7〜9月期のGDP(速報値)は前年同期比で3.1%増となった。ウクライナ侵略の長期化に伴う戦時経済で内需が拡大し、6四半期連続のプラスとなった。足元ではルーブル安基調が続いており、輸入コストの押し上げで市民の負担が一段と高まる可能性がある。

プーチン大統領は10月28日に首都モスクワで開いた経済問題に関する会合で「わが国の産業は好調でロシア経済は成長を続けている」と強調した。

ロシア経済発展省によると24年7〜9月期は製造業が6%増で自動車や化学が伸びた。ウクライナ侵略の長期化で弾薬や兵器などを製造する軍需産業は増産を続けている。内需拡大で小売りは6%増えたほか建設などもプラス成長が続き、戦時経済下で軍需を含む内需がけん引する構図となっている。

国際通貨基金(IMF)は10月、24年通年のロシアの成長率を従来の3.2%から3.6%に上方修正した。

プーチン氏は10月の会合で「ロシアの失業率は記録的な低水準にある」とも述べ、若年層の失業率の低下に言及した。7〜9月の失業率は2.4%と過去最低水準で推移する。

ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州など一方的に併合した地域での攻勢を強めている。侵略長期化で戦闘に参加する兵士が慢性的に不足する状況になっており、ロシア軍は志願兵である契約軍人を1日あたり1000人程度採用しているとみられる。

モスクワでは高額な報酬を提示して兵士を募集するチラシを飲食店など各地でみかける。モスクワのソビャニン市長は7月、契約軍人の一時金として190万ルーブルを支払うと発表した。一時金は政府からの支給額に各地の当局が上乗せして支払う仕組みで、州などの連邦構成体ごとに異なっている。

足元ではロシアの通貨ルーブルの下落基調が進んでいる。11月に入ってルーブルの下げが目立ち、足元は1ドル100ルーブル前後で推移する。約1年ぶりの安値圏となっている。

11月の米大統領選でトランプ前大統領が再選を決め、ドル高の動きが進んでいる。加えてトランプ氏の掲げるエネルギー政策では米国の原油増産を促す方針で、ロシアの歳入の柱でもある原油価格が下落する連想が働いてルーブル安につながっているとみられる。

ルーブル安はロシアの輸入コストを押し上げ、戦時経済下で再燃しているインフレを一段と加速させる可能性がある。

24年7〜9月のインフレ率は8.9%と四半期ベースで22年10〜12月以来の高水準となった。10月のインフレ率は前年同月比8.5%とやや鈍化したものの、高水準で推移している。

ロシアでは乳製品や野菜などといった食料品の高騰が特に進んでいる。

モスクワ在住の会社員は「最近は食料品のほか、外食店でも値上げの動きが目立っている」と生活負担が高まっていると指摘する。原材料費のほか人件費の高騰が影響しているとみられる。

[日経ヴェリタス2024年11月24日号]

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