米国で店頭で販売されている牛乳のサンプルの2割に鳥インフルの痕跡が残っていたことが分かった=ロイター

【ニューヨーク=吉田圭織】米国で「H5N1型」の鳥インフルエンザ感染が牛に広がっている。さらなる感染拡大を防ぐために29日から米農務省(USDA)は乳牛を州外に移動する際に鳥インフルの検査を義務付け、感染が確認された場合には報告するように研究所や獣医に命じた。

米疾病対策センター(CDC)によれば、乳牛の感染はテキサス州やミシガン州など9つの州に広がっている。米食品医薬品局(FDA)は店頭で売られている牛乳のサンプルの5分の1にウイルスの痕跡があることをPCR検査で確認したという。USDAは牛ひき肉の検査も開始すると29日に発表した。現時点で肉牛の感染は確認されていないが、高齢の乳牛はひき肉に加工されるケースがある。

米国では牛乳に加熱殺菌をすることが連邦法で義務付けられている。加熱殺菌をしているため、ウイルスの痕跡が残っていたとしても、牛乳を飲んでも害はないとFDAは指摘している。FDAは38の州から297の市販の牛乳サンプルを調査し、検査を続けている。

乳牛への感染が最初に確認されたのは2024年3月。同じ月には乳牛を飼育する農家の従業員の感染も発見された。現時点では加熱殺菌をした牛乳を飲んだり、火を通した肉を食べた場合に感染するリスクは低いと考えられている。

米国では鶏への感染の場合、同じ場所で飼育している個体をすべて殺処分する感染対策がとられている。牛は育てるのに時間がかかり、個体当たりの価格が高額であるため、殺処分となれば農家に大きな打撃となる。

こうした懸念が対応の遅れにつながったとの指摘もある。一部の農家は殺処分を恐れて感染状況を把握するためのUSDAの調査に協力することを拒んだという。

USDAは、鶏と異なり牛は感染しても死なずに回復するため、殺処分にする必要はないと指摘している。全米生乳生産者連盟(NMPF)は29日の声明で「牛乳農家はルール導入に協力する」と述べた。USDAの関係者は「一時は農家からの抵抗があったが、徐々に状況は改善している」と記者会見で明らかにした。

一方で、今回のUSDAの対応についても批判が出ている。USDAは規制だけでなく、米国の農産物の宣伝の役割も担うため、対応が後手に回ったとの見方がある。

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