【パリ=北松円香】フランスの国民議会(下院)は4日、バルニエ内閣の不信任案を賛成多数で可決した。同内閣は総辞職する。バルニエ首相による緊縮型の2025年度(1〜12月)予算案に野党が反発し、2日に不信任案を提出していた。
バルニエ首相を任命したマクロン大統領にとっても打撃で、求心力の低下は避けられない。マクロン氏は5日現地時間午後8時から、仏国民に向けて演説する予定だ。
下院の最大会派である左派連合の新人民戦線(NFP)が提出した不信任案に極右の国民連合(RN)が同調し、賛成票が過半となった。不信任案の成立は1962年にドゴール政権下でポンピドゥー内閣が退陣に追い込まれて以来、約60年ぶり。
バルニエ氏は憲法の規定を適用し、議員投票を経ずに社会保障予算案を強行採択しようとした。同案は不信任決議に伴い廃案となる。
新予算案の審議・成立は年末までに間に合わない恐れがある。その場合は2024年度予算を当面踏襲する特別法で対応する。政治の混乱が続くなか、仏国債利回りは財政の悪化を織り込むかたちで上昇を続けている。首相退任で予算案審議の混乱が長引けば、仏国債に対する売り圧力がさらに強まりかねない。
バルニエ氏はマクロン政権の5人目の首相だ。在任期間はわずか3カ月で、1958年に始まった政治体制「第5共和制」の首相としては最短となる。
2024年初夏の下院選ではマクロン氏を支える与党連合が敗北。NFPと中道の与党連合、RNが議会を三分する構図となり、議会運営が困難になっている。
不信任決議はバルニエ内閣が対象で、国家元首である大統領の進退には影響しない。野党はマクロン氏による首相任命責任を問うが、同氏は続投に意欲をみせる。議会の大統領弾劾手続きはハードルが高く、現状では辞任に追い込まれる可能性は低い。
フランスでは大統領は外交・防衛、首相は内政担当という役割分担がある。そのため今後も外交方針は大きく変わらない見通しだ。ただし政局混乱に伴ってマクロン氏の国内での求心力が低下し、外交でも思い切った施策を取りづらくなるリスクは残る。
今後は憲法の規定に基づき、マクロン氏が後継首相を指名する。指名が難航する場合はバルニエ内閣が暫定的に執務を続けるとみられる。
仏憲法は、前回の選挙から1年間は議会は解散できないと定める。そのため現時点で内閣が総辞職しても議会は解散しない。
欧州ではロシアのウクライナ侵略などをきっかけに物価高が進み、極右などポピュリズム勢力の勢いが増している。ドイツでもショルツ首相の連立政権が瓦解し、25年2月に総選挙が実施される見通しだ。
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