【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は4日、未成年への性適合治療を禁じた南部テネシー州の州法の合憲性を巡り口頭弁論を開いた。多数派を占める保守派判事の大半が同州法の維持を支持する姿勢を示唆した。2025年夏までに下す判断は、同様の禁止法が成立している20州以上に影響を与える。
テネシー州の法律は23年に成立した。医療関係者が18歳未満の未成年者に対し、出生時の性と一致しない自認する性への適合を目的として二次性徴抑制剤の投与やホルモン治療を提供することを禁ずる。
州側は、未成年を身体的・精神的な損傷から守り「自分の(出生時の)性の良さが分かるよう促す」のが目的だとしている。
トランスジェンダー(出生時の性と自認する性が一致しない人)の子供を持つ家族と性適合治療を提供する医療関係者が同州法の差し止めを求めて訴えを起こし、バイデン政権が訴訟に参加した。
政権側は、同州法は性別やトランスジェンダーであることを理由にした差別にあたり違憲だと主張。一審の連邦地裁は違憲の可能性が高いとして同州法の発効を一時差し止めたが、連邦控訴裁が判決を覆したため政権側が上訴していた。
口頭弁論では保守派判事から、性適合治療を禁止した場合と容認した場合のどちらにもリスクの指摘があることから、州に判断を任せるべきではないかとの発言が相次いだ。
リベラル派判事は、性適合治療の必要性に理解を示し、テネシー州の州法は性差別に当たるとの見方を示唆した。
トランスジェンダーを公言する弁護士も最高裁で初めて弁論し、家族側の主張を代弁した。
判事9人で構成する最高裁は保守派6人、リベラル派3人と保守に傾斜している。
共和党のトランプ次期大統領は、未成年者への性適合治療を全米で禁止し、成人についても規制すると公約している。女性を自認するトランスジェンダーの女子スポーツ参加も禁止する考えを示している。
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