ロシアのラブロフ外相は5日、地中海のマルタで開催された欧州安保協力機構(OSCE)の閣僚理事会に出席した。ウクライナ侵略が長期化する中、今後の停戦に向けた協議を視野に西側諸国との接触を拡大する狙いもあるとみられる。
2022年2月のウクライナ侵略の開始後、ラブロフ氏が欧州連合(EU)加盟国を訪問するのは初めてとなる。ロシア通信によると5日の会合でラブロフ氏は「冷戦が熱い局面に移行する恐れがある」と述べ、米国などが軍備拡大に向けた動きを強めていると批判した。
OSCEは57カ国が加盟する地域安全保障機構。今回の閣僚理事会には米国のブリンケン国務長官らのほか、ウクライナのシビハ外相も出席し6日まで開催される。
ラブロフ氏が閣僚理事会に出席した背景にはロシアの立場を訴えるとともに、西側諸国との接触を増やす考えもあるとみられる。
ラブロフ氏は12月に入り、米国人ジャーナリスト、タッカー・カールソン氏のインタビューを受けた。ウクライナ侵略についてのロシアの主張を訴える狙いとみられる。カールソン氏は今年2月にプーチン大統領にインタビューしたほか、米大統領選で当選したトランプ前大統領にも近い。
ウクライナへの支援を続ける西側諸国がロシアに接触する動きも起きている。ドイツのショルツ首相は11月にプーチン氏と電話協議し、ロシアを非難した上でプーチン氏にウクライナから軍隊を撤退させるよう訴えた。ロシア大統領府によると両首脳の補佐官が今後も連絡を取り合うことで合意した。
プーチン氏は交渉に前向きな姿勢を示している。6月のロシア外務省での演説でウクライナとの停戦条件について、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の撤退や同国の北大西洋条約機構(NATO)への加盟放棄を条件として挙げていた。
11月の有識者会合ではトランプ氏と「対話する用意がある」と述べた。トランプ氏はロシアによるウクライナ侵略の終結に意欲をみせている。
ロシアは死傷者拡大をいとわずウクライナ東部ドネツク州などで攻勢を強めている。25年1月のトランプ氏の大統領就任や今後の停戦交渉をにらみ、ウクライナ東・南部4州で制圧地域を拡大する狙いとみられる。
一方でウクライナはロシアの侵略行為に対抗するためNATO加盟を求めている。NATOは条件が整えば受け入れる方針だが、加盟時期は明示されていない。
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