韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日夜に宣言した「非常戒厳」。市民や国会議員の抵抗により一夜で解除され、民主主義が機能したとして、世界に発信された。想定外の強権発動を受け、日本でも自分ごとに置き換えて、国のありようを問う声が広がる。若い世代の姿も目立ったという韓国市民社会の熱は、どこから来たのか。(中川紘希、西田直晃)

◆軍は来た 市民は逃げず、立ち向かった

 「韓国市民の力を見せてもらった」。3日夜、非常戒厳宣言直後の国会前。ソウルで研究者の会議があり、現場に居合わせた民間シンクタンク「新外交イニシアティブ」代表の猿田佐世さん(47)が市民の熱気を振り返る。

4日、ソウルの国会本館への突入を準備する韓国軍の戒厳司令部の兵士(聯合=共同)

 国会近くの料理店で食事をした後、ホテルに戻ろうとすると、国会前には人が集まり始めていた。猿田さんは「一人ひとりが、自分が動かねばという思いで駆け付けた印象だった」と話す。  市民はどんどん増えて「戒厳令を解除せよ」と声を上げた。軍や警察の車が現れるたび、民衆が取り囲み動けなくした。「向こうから軍が来る」という情報が入り「逃げるのかな」と思った猿田さん。だが民衆は、逆に「行くぞ」と声を掛け合い、その方向に走って行った。

◆日本社会に「反日の大統領に代わるのでは」という声

 10〜30代の若者も多く、スマートフォンで離れた親に実況する姿も。4日未明に国会で戒厳解除の決議が可決。「張り詰めた空気が少し緩みながらも声を上げ続けていた」と語った。

国会前で韓国の尹錫悦大統領の退陣などを求める人たち=6日、ソウル(共同)

 猿田さんは、日米韓の連携強化を重視してきた尹大統領が退陣すれば「反日の大統領に代わるのでは」と否定的に捉える声が、日本社会にあると指摘する。むしろ「人権や民主主義が韓国市民の手によって守られたことに、敬意を表するべきだ」と述べる。  朝鮮半島を植民地支配した日本は、太平洋戦争で敗戦。その後進駐した米軍とソ連軍によって朝鮮は南北に分断され、韓国では1987年の民主化まで軍事政権が続いた。「韓国はいまも抵抗し続けている。その状況をつくり出した責任の一端が日本にあることも考えるべきでは」と話した。

◆日本で同じような事態が起きたら、市民は動くだろうか

 韓国の市民運動や政治に詳しい「日韓市民交流を進める希望連帯」代表の白石孝さん(74)は「韓国の憲法は、戒厳も国会が解除できるなど大統領の権限を弱くしている。三権分立が機能した」と評価する。  白石さんによると、韓国の市民活動はときに政治を動かしてきた。2008年の牛海綿状脳症(BSE)のおそれのある米国産牛肉の給食への導入、2014年のセウォル号沈没事故。問題が起きるたび抗議活動が行われてきた。2016〜17年には、民主主義の象徴とされるろうそくを手にした民衆が、機密資料の提供で友人を国政に介入させたなどとして朴槿恵(パククネ)大統領=当時=を批判する「キャンドル革命」が起きて、退陣に追い込んだ。

韓国国会(韓国国会ホームページより)

 白石さんは「韓国の市民は世代を超えて民主化の歴史を受け継ぎ、政治に意思表示できる」と話す一方、輸出不振や物価高などで韓国経済は停滞し「政権打倒に動けても、市民は生活に疲れているのも事実」と話す。日本で同じような事態が起きたら、市民は動くだろうかと思う。「日本は市民社会の政治参加があまりにも薄い。一人ひとりが行動しないと民主主義は発展しない」と警鐘を鳴らした。

◆1980年5月の戒厳令「光州事件」の記憶

 「在日の先輩は韓国では北朝鮮のスパイとみなされ、相次ぎ摘発されていた」。戒厳のニュースに触れて、東京都内に住む金正則さん(70)は、大学生の夏休みに訪れた1970年代後半の韓国の緊張した空気を思い出したという。朴正熙(パクチョンヒ)氏の軍事政権下、1953年に休戦した朝鮮戦争の影が色濃く、夜間外出も禁じられた。  「今回命がけで国会前に集まった人たちを見て...

残り 1564/3127 文字

「東京新聞デジタル」スタート
この記事は会員限定です。

無料会員に登録する 有料会員に登録する ログインして続きを読む

※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。

会員登録について詳しく見る

よくある質問はこちら

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

新規登録 ログインする

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

新規登録 ログインする

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

新規登録 ログインする

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

新規登録 ログインする

カテゴリーをフォローする

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

    新規登録 ログインする
  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

    新規登録 ログインする
Xで共有する Facebookで共有する メールで送る Xで共有する X Facebookで共有する facebook LINEで共有する LINE はてなブックマークで共有する はてなブックマーク

コメントを書く

有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。

コメント機能利用規約

コメントを投稿しますか?

コメントを削除しますか?

削除しました。

送信しました。

管理者へ報告

コメント機能利用規約に違反していると思う理由を選択し、内容をお知らせください。

報告する理由

内容の詳細

0 /150文字 `; }); $('.report_types').append(type_list); } var pending_count=resjson.data.status.max_rec-(page*no_item); if (resjson.success) { $('#more_button').html("もっと見る "+pending_count+"件"); $('#page').val(resjson.data.status.next_page) $('#comment_count').html(resjson.data.count); if(resjson.data.status.page_no=='1'){ var comment_title=`

みんなのコメント${resjson.data.count}件

` $('#lst-comment-001').append(comment_title); } Object.entries(resjson.data.list).forEach(([key, value]) => { if (value.comment_status != 10) { if (value.reply_count == 0) { return; // Skip this iteration if reply_count is 0 } comment_list += `
  • ${value.comment_status == 21 ? 'コメントは管理者によって削除されました' : (value.comment_status == 20 ? 'コメントは投稿者により削除されました' : 'コメントは管理者によって非公開にされました')}
  • `; return; } var is_like=getReaction(value.id,'like',0); var is_agree=getReaction(value.id,'agree',0); var relativeTime = getRelativeTime(value.regist_date); var nickname = (value.nickname === '' ? (value.comment_type == 10 ? '管理人' : (value.comment_type == 20 ? 'author' : '匿名')) : value.nickname); var photo=`https://static.tokyo-np.co.jp/tokyo-np/images/user_icon/`+getIcon(value.icon_type,icon_json,value.comment_type); var relativeTime = getRelativeTime(value.regist_date); comment_list += `
  • ${nickname} ${relativeTime} ${value.self_text}`; comment_list+=``; comment_list+=`

    ${value.comment_text}

    `; if(value.comment_edit_status==10){ comment_list+=`

    管理者によりコメント編集済み

    `; } comment_list+=` `; comment_list+=`

    コメントに『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

    新規登録 ログインする `; comment_list+=``; //reply section comment_list+=`
    `; comment_list+=`
  • `; }); $('#lst-comment-001').append(comment_list); $('#more_button').html("もっと見る "+(pending_count)+"件"); if(resjson.data.status.next_page>0 && resjson.data.status.max_rec>0){ $('#more_button').show(); }else{ $('#more_button').hide(); } } }).fail(function (jqXHR, textStatus, errorThrown) { alert("コメントの投稿に失敗しました"); });}function showReply(comment_id,type){ const no_item=3 // number of item to show var page= $('#reply_page').val()!=''?parseInt($('#reply_page').val()):1; getReplyList(comment_id,no_item,page,function(error,res){ if(res){ const icon_json=res.icon_json var pending_count=res.data.status.max_rec-(page*no_item); Object.entries(res.data.list).forEach(([key, value]) => { if (value.comment_status != 10) { reply_list= `
  • ${value.comment_status == 21 ? 'コメントは管理者によって削除されました' : (value.comment_status == 20 ? 'コメントは投稿者により削除されました' : 'コメントは管理者によって非公開にされました')}
  • `; $('#lst-comment-'+comment_id).append(reply_list) return; } // check cookie for reaction var is_like=getReaction(value.id,'like',1); var is_agree=getReaction(value.id,'agree',1); var photo=`https://static.tokyo-np.co.jp/tokyo-np/images/user_icon/`+getIcon(value.icon_type,icon_json,value.comment_type); var relativeTime = getRelativeTime(value.regist_date); var nickname = (value.nickname === '' ? (value.comment_type == 10 ? '管理人' : (value.comment_type == 20 ? 'author' : '匿名')) : value.nickname); var reply_list=`
  • ${nickname} ${relativeTime}

    ${value.self_text}

    `; reply_list+=``; reply_list+=`

    ${value.comment_text}

    `; if(value.comment_edit_status==10){ reply_list+=`

    管理者によりコメント編集済み

    `; } reply_list+=` `; reply_list+=`

    コメントに『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

    新規登録 ログインする `; reply_list+=`
  • `; $('#lst-comment-'+comment_id).append(reply_list) }); $('#reply_page').val(res.data.status.next_page) $('#more_button_' + comment_id).remove(); if (res.data.status.next_page > 0 && res.data.status.max_rec > 0) { var more_button = ` `; $('#lst-comment-' + comment_id).append(more_button); } if(type==1) openReplyBox(comment_id,icon_json); } }) } function openReplyBox(comment_id,icon_json){ $('.replyCommentBox').remove() var type=30 var photo= getIcon(``,icon_json,type); var self_text=`自己紹介文が未登録です`; var commentBox=`

    有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。

    `; $('#reply-comment-' + comment_id).append(commentBox); const textarea = document.getElementsByClassName(`comment_reply_text_${comment_id}`)[0]; const charCount = document.getElementById(`charCount_${comment_id}`); textarea.addEventListener('input', function () { charCount.textContent = this.value.length; if ( this.value.length > 500) { charCount.style.color = 'red'; } else { charCount.style.color = ''; // Reset to default (black) } }); } function getIcon(icon_name,json,type) { if(type==10){ return `manager-icon.png`; }else if(type==20){ return `author-icon.png`; }else{ const iconArray = Object.values(json); if (iconArray.includes(icon_name)) { return icon_name; } return json["0"]; } } function toggleContent(trigger) { var content = $(trigger).siblings('.js-profile-content'); var isVisible = content.is(':visible'); if (isVisible) { content.removeClass('is-open'); } else { content.addClass('is-open'); } content.toggle(); }

    鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。