フランスの国民議会(下院)がバルニエ内閣の不信任決議案を可決し、首相は5日に辞任した。少数与党で議会の基盤がもろく、緊縮型の予算案をめぐる紛糾で行き詰まった。ドイツに続く欧州大国の政局不安を懸念する。
市場では財政悪化への警戒が根強い。マクロン大統領は2027年までの任期を全うする考え。求心力低下は避けられないが、混乱収束へ指導力を発揮してほしい。
夏の下院選では中道の与党連合が敗北し、第2勢力に後退した。最大勢力となった左派連合との選挙協力で極右の国民連合(RN)を第3勢力に抑えたが、3陣営がにらみ合う不安定な状況だ。
財政赤字縮小をめざす25年度予算案を、内閣が憲法の規定を使い議員投票なしで採択したことが不信任案の引き金となった。左派が倒閣に動き極右も同調した。
市場では財政リスクへの警戒がくすぶる。11月には仏国債への売り圧力が強まり、信用力の高い独国債との利回りの差が一時12年ぶりの水準に広がった。仏国債の利回りが財政再建途上のギリシャの国債を上回る場面もあった。
欧州委員会の予測によると24年のフランスの財政赤字は国内総生産(GDP)の6.2%。3%までとする欧州連合(EU)のルールを超え、加盟国でルーマニア(8%)に次ぐ規模だ。政府債務残高のGDP比もギリシャ、イタリアに続く112.7%に達する。
5日の市場では極右RNが予算成立に前向きだと伝わり、仏国債への売りは一巡した。だが議会の機能不全が続けば予算審議の難航は必至だ。一方で野党が主導すれば、財政赤字が一段と膨らむ。
憲法の規定上、来年夏まで下院選は実施できない。与野党は市場の信認を損なわぬよう財政の現実を直視し、歩み寄るべきだ。
ドイツでは11月上旬、ショルツ連立政権が瓦解した。来年1月に発足するトランプ次期米政権は通商や安全保障で混乱をもたらしかねず、独仏の内政不安は国際協調の観点でも憂慮すべき事態だ。
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