12日午前、尹大統領が急きょテレビを通して談話を発表した。公の場に姿を見せるのは5日ぶり、2度目の弾劾訴追案の採決が迫る中、進退に言及するのではないかと注目された。しかし、尹大統領は「私を弾劾しようが、捜査しようが、私はこれに堂々と立ち向かう」と堂々とした口調で、最後まで闘う姿勢を示した。

約30分の談話 「非常戒厳は“内乱”ではなく“統治行為”」と主張

尹大統領が非常戒厳の宣言以降、談話を発表するのは今回で4回目。前回は弾劾訴追案が採決された7日で、わずか2分半の談話だったが、今回は約30分に及んだ。

「巨大野党の議会独裁に対抗し、大韓民国の自由民主主義と憲政秩序を守ろうとした。その道しかないと判断して下した大統領の憲法上の決断であり、統治行為がどうして内乱になり得るか」

非常戒厳を進言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相が検察に逮捕され、11日には警察による家宅捜索が大統領府にまで及んだ。自身に対する内乱の疑いなどでの捜査が進む中、尹大統領は野党による議会独裁を理由に「非常戒厳は統治行為」と主張した。「」

「国政まひと国家法規を乱すことを主導した勢力と犯罪者集団が国政を掌握し、大韓民国の未来を脅かすことだけは、どんなことがあっても防がなければなりません」

国会に突入した戒厳軍(12月3日)
この記事の画像(5枚)

なぜ“非常戒厳”を宣言? 新たに明かされた“選挙管理委員会”の問題

尹大統領は、12月3日に非常戒厳を宣言した際に、その理由について国会で過半数を占める野党によって、閣僚や検事の弾劾訴追が相次いでいることや提出した予算案の金額が削減されていることなどを挙げた。

そして、今回の談話では、野党が外国人スパイを処罰するための法改正に反対したことに加え、検察と警察が捜査に使う費用や災害対策予備費など数々の予算が減らされたことを非常戒厳を宣言した理由として新たに明かした。さらに…。

「私が非常戒厳という厳重な決断を下すまで、これまで直接明らかにできなかったさらに深刻なことがたくさんあります」

そう語った尹大統領が特に時間を割いたのが、選挙管理委員会が抱えるとする問題だ。

中央選挙管理委員会に突入した戒厳軍(12月3日)

非常戒厳を宣言した際、尹大統領は戒厳軍を国会だけでなく、中央選挙管理委員会にも展開し、軍が選挙管理委員会の庁舎を3時間近くにわたり占拠したことが明らかになっている。
その理由について、非常戒厳を進言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相は韓国のテレビ番組で野党が大勝した4月の総選挙での不正疑惑について「捜査の必要性を判断するためだった」と主張していた。そして今回、尹大統領が“選挙管理委員会の問題”について言及した。

「民主主義の核心である選挙を管理するシステムがこんなにでたらめなのに、どうして国民が選挙結果を信頼できるか?」

尹大統領は、2023年、選挙管理委員会などに北朝鮮によるハッキング攻撃があったとした上で、韓国の情報機関・国家情報院が情報流出とシステムの安全性を点検しようとしたところ、選挙管理員会が拒否したと明かした。
その後、選挙管理委員会による大規模採用不正事件が起きたことで、選挙管理委員会は国家情報院の点検を受け入れ、一部を調べることができたが、国家情報院の職員でもハッキングでき、いくらでもデータを操作できる状態で、ファイアウォールも事実上ないも同然、パスワードはとても単純なものだったという。

2024年4月の総選挙を前に、問題の改善を求めたというが、きちんと改善されたかどうか分からなかったため、今回の非常戒厳で、金前国防相に選挙管理委員会のシステムを点検するよう指示したと述べた。

与党・国民の力 韓東勲(ハン・ドンフン)代表

総選挙での大敗が“非常戒厳”の引き金に

韓国内に大きな混乱を及ぼした非常戒厳の引き金は4月の総選挙での大敗だったと言えるだろう。300議席のうち、最大野党「共に民主党」が175議席(系列政党含む)を獲得して過半数を維持し、与党・国民の力は108議席(系列政党含む)の大敗となった。尹大統領は約30分に及んだ談話を次のように結んだ。

「国民の皆様、この2年半、私はひたすら国民だけを見つめ、自由民主主義を守り再建するために、不正と不正、民主主義を装った暴挙に立ち向かって戦いました。
血と汗で守ってきた大韓民国、私たちの自由民主主義を守る道に、皆が一つになってくださることを切にお願いします。
私は最後の瞬間まで国民の皆さんと一緒に戦います。
短い時間ですが、今回の戒厳令で驚き、不安だった国民の皆様にもう一度お詫び申し上げます。国民の皆様に対する私の熱い思いだけは信じてください。」

談話に与野党から反発 そして、国民の心に刻まれる“光州事件”

尹大統領の談話について、与党・国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は「こういう談話が出てくるとは全く予想できなかった。尹大統領が大統領職を遂行できないという点がより一層明確になったと考える」と述べた。また、尹大統領に国政まひを主導した勢力とされた最大野党・共に民主党は、「憲政守護のために憲法と法律に違反して失敗する戒厳を企てたという発言は、極端な妄想の表出であり、不法戒厳発動の自白だ」と指摘した。

さらに、韓国メディアは国民の冷ややかな反応を多数伝えている。
韓国で前回、非常戒厳が宣言されたのは1979年10月。翌年に光州市で民主化を叫ぶ市民と戒厳軍が衝突し、多くの死傷者が出た。韓国の国民の間では、世代を問わず、光州事件が痛ましい出来事として、心に刻まれている。尹大統領がいくつもの理由を挙げて、非常戒厳の正当性を訴えたとしても国民の理解を得られるのは難しいのが現実だ。

韓国の国会

弾劾訴追案可決の公算高まる 内乱の疑いなどの捜査も加速

野党は12日夕方、2回目の弾劾訴追案を提出し、14日に採決が行われる見通しだ。国民の力の韓代表をはじめ、与党議員が続々と弾劾に賛成する意向を示し、可決される公算が大きくなっている。弾劾が成立すれば、大統領の職務は停止となり、180日以内に憲法裁判所が弾劾の妥当性を審査する。憲法裁判所の裁判官9人中6人が賛成すれば大統領は罷免となり、60日以内に大統領選が行われることになる。

さらに、尹大統領に対する内乱の疑いなどでの捜査も加速している。警察は、内乱の疑いなどで身柄を拘束していた趙志浩(チョ・ジホ)・警察庁長官ら2人の逮捕状を請求した。逮捕されれば、今回の非常戒厳での逮捕者は、金前国防相と合わせて3人となる見通しだ。

「弾劾しようが捜査しようが堂々立ち向かう」と述べた尹大統領の行く末はーー。
韓国内の混乱は未だ収束が見えない状況だ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。