【ワシントン=赤木俊介】米国勢調査局が19日発表した推計によると、米国の人口は2024年に23年と比べ330万人増加した。増加率はおよそ1%で、過去最低を記録した21年(0.2%)から回復し約20年ぶりの上昇率となった。増加分の8割にあたる280万人が移民だ。先進国で少子高齢化が広がる中、米国は移民が人口増加を支え続けている。
米国の人口は増え続けているが、24年推計の1%増は01年以来の高水準となった。国勢調査局によると、米人口の増加率は00年以降、年平均0.8%を推移する。
増加のけん引役が移民だ。移民流入は4年連続で増加した。南部のフロリダ州、テキサス州、そして西部カリフォルニア州では移民人口が30万人以上増えた。移民人口は首都ワシントンと全米50州で増加した。世界各国のなかで相対的に強い経済が移民をひきつけている。
一方、出生数から死亡数を差し引いた自然増加はおよそ51万9000人だった。増加幅は4年連続で伸びたものの、増加基調へ転じたというよりも新型コロナ禍の低迷から回復したという側面が強い。自然増加は150万人以上を記録した07年をピークに減少基調にある。
国勢調査局は20年の国勢調査や行政記録、年次の標本調査などを基に推計した。同局の人口統計学者、クリスティー・ワイルダー氏は「1%の増加率は直近では高水準と言えるが、歴史的にみれば特筆する値ではない」という。「過去5年間で出生数の重要性が低下し、国外からの純移動人口が成長の主な原動力となった」と説明した。
内訳をみると、東部バーモント州、南部のミシシッピ州とウェストバージニア州を除き全ての州と首都ワシントンで人口が増えた。最も人口が増えた州は米国で2番目に人口が多いテキサス州だった。
米国は建国以来人口が増え続け、強い経済成長を支える労働力を供給してきた。一方で、国勢調査局は米人口が2080年に3億7000万人のピークを迎え、米史上初の人口減少期に転じるという予測を23年10月に発表している。
国勢調査局は米国が移民の流入を完全に断ち切った場合、2025年から人口が減り始めると推計した。2100年には人口が現在よりも1億人ほど少ない2億2600万人程度となる。
トランプ次期米大統領は主に不法移民を対象とした「米史上最大規模」の国外退去計画を実施するという。実現可能性は低いが、米市民権取得について定めた憲法解釈も変更し、米国内で出生、または帰化した者すべてを米国市民と認める現行ルールを厳しく運用するという公約も掲げ、当選した。
就任当初に寛容な移民政策を打ち出したバイデン大統領も不法移民の取り締まりを大幅に強化した。歴史的に移民を受け入れてきた米国だが、党派に関わらず内向きな姿勢が主流となってきた。
米ピーター・G・ピーターソン財団によると、米労働者人口に占める外国生まれの労働者(不法移民も含む)の割合はおよそ17%だ。また、外国生まれの人口の労働参加率は米国生まれの人口と比較して高い。米国への移民の流れが絶たれれば、米経済が今後も優位性を維持することが難しくなる可能性が高い。
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