1954年に太平洋のマーシャル諸島ビキニ環礁付近で米国が実施した水爆実験で被曝(ひばく)した高知県内の元漁船員や遺族が、全国健康保険協会(本部・東京)に船員保険の適用を求めた訴訟の口頭弁論が14日、東京地裁(岡田幸人裁判長)であった。

 原告側は元漁船員らの健康被害が、水爆が爆発した瞬間に放出された初期放射線よりも、爆発後に生成された大量の放射性物質からの被曝によるものと主張。

 軍事機密の壁があり被害の実態が隠されていると指摘した。

 原告側によると被告側は、専門家の意見をまとめて今夏までに反論する見通しという。

 閉廷後の報告集会では、被曝した元漁船員の遺族で原告団長の下本節子さん(73)=高知市=が「(日本)政府は、放射性物質を体内に取り込む内部被曝の被害を矮小(わいしょう)化している」と指摘した。

 下本さんの父親はマグロ漁船に乗っていた54年に放射性降下物「死の灰」を浴びた。

 ビキニ事件から70年の節目となる今年3月、下本さんはマーシャル諸島を訪問。核実験で移住を余儀なくされた島民らと会い「核実験に人生を狂わされた悔しい思いを共有してきた」と報告した。

 民事訴訟法の改正で口頭弁論のオンライン参加が可能となり、被告側は東京の弁護士がオンラインで参加。原告側は高知の弁護士1人がオンライン参加した以外は、東京地裁に出頭した。(編集委員・北野隆一)

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