不透明な中東ドバイの不動産取引の実態を解明しようと、世界58カ国の記者150人以上が共同で取り組んだ国際調査報道プロジェクト「ドバイ・アンロックト(Dubai Unlocked)」。参加メディアは15日(日本時間午前0時)、調査結果を基にした特集記事を一斉に報じ、不透明な資金が世界からドバイの不動産市場に流れ込んでいる実態をあぶり出した。
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同プロジェクトは、入手した数十万件にのぼるドバイの不動産所有者データを基に、本人確認の作業などを報道機関の枠を超え、計74のメディアが国際的な連携で進めた。英紙タイムズ、仏紙ルモンド、独誌シュピーゲルなどのほか日本からは日本経済新聞が参加した。
膨大な所有者リストには、通常の手段ではドバイで不動産を購入するのが困難であるはずのテロ組織やその支援者、米制裁対象者、麻薬犯罪組織に関わる人物などが多数含まれ、不透明な取引実態が次々と明らかになった。
英紙タイムズは「英国の犯罪者が刑務所からドバイの高級不動産を購入」との見出しで特集記事を配信した。麻薬取引に絡むマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で投獄された人物が、独房から数億円規模の不動産を購入していた実態などを赤裸々に紹介した。公的機関から1200万ポンド(約24億円)を盗んだ犯罪者がドバイで不動産を所有していた実態も示した。
本プロジェクトの幹事役の非営利団体(NPO)「組織犯罪・汚職報道プロジェクト(OCCRP)」は、ノルウェーの大手経済メディア E24と共同で「汚れた資金の安住の地、ドバイ」と題した特集記事を配信した。スペイン当局から捜査を受ける赤道ギニアの国営石油会社元代表のカンディド・ヌスエ氏などを取り上げた。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は「麻薬王への制裁の効果に疑問符」との見出しで報じた。米当局が指名手配する世界的な麻薬王のダニエル・キナハン氏が23年、資産凍結中にもかかわらず、同氏の妻がドバイの高級住宅地に約210万ドル(約3.2億円)の別荘を購入する不透明な取引の実態などを明かした。
ドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)を「世界で最も危険な犯罪者や制裁から逃れる人を引き寄せる国」と表現した。
本調査プロジェクトは2023年9月にスタートした。日経は、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの親イラン武装組織フーシなど、米国が制裁を科すテロ組織の関係者が、ドバイの不動産所有者リストに多数含まれていたことなどを報じた。仮想通貨の投資勧誘などにからみ、違法行為が疑われる日本人の情報も複数見つかった。
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