ロシアの新しい国防相に経済学者のベロウソフ氏が指名された。
ベロウソフ氏は兵士の待遇改善や戦時経済の強化を提唱しており、長期的な戦争に備えた経済戦略を立てることが期待されている。
一方で、ロシアの攻勢が強まり、ウクライナでは物資不足が深刻化している。

戦闘にかかる費用が問題に

ロシアの新しい国防相に指名されたアンドレイ・ベロウソフ氏が、兵士の待遇改善など戦時経済にテコ入れする考えを示した。

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ロシアのプーチン大統領は12日、ショイグ国防相を交代させ、第1副首相だったベロウソフ氏を新たな国防相に任命する人事を上院に提案している。

こうした中、ベロウソフ氏は13日、ウクライナ侵攻に関する議会に出席し、兵士の福利厚生なども含めた待遇改善が必要との認識を示した。

ベロウソフ氏は「(兵士の)生活は金銭的な手当だけでは成り立たない。まだやるべきことがいくつかある」と話した。

ベロウソフ氏は、プーチン政権下で経済発展相や経済担当の大統領補佐官を歴任していて、ウクライナ側は、戦時経済を一段と強固にして長期戦に備える狙いがあるとみて、警戒を強めている。

ロシアの軍事支出は約51兆円

ここからはフジテレビ・立石修取材センター室長がお伝えする。

── ロシアの新しい国防相ベロウソフ氏は、経済の専門家ということだが、プーチン氏の狙いは何なのだろうか?

今回の人事は、プーチン氏がウクライナ戦争をどう見ているかを、よく表している人事だといえる。

ベロウソフ氏はモスクワ州立大学出身。
マクロ経済学が専門という正真正銘の経済学者で、2012年に経済開発大臣に就任し、プーチン氏の側近となった。

6日の閣議の映像では、プーチン氏の右隣に座っていて、信頼の厚い重要メンバーだということがわかる。
西側メディアは「企業の利益より国家の利益を優先する経済学者」と報じていて、プーチン氏の思想ともマッチする。

戦争が2年を超え、戦闘にかかる費用をどう管理するかが問題になっているため、経済通のベロウソフ氏を起用したとみられている。

BBCによると、ロシアの軍事支出は2024年時点で、国家予算の30%を占める約30兆ルーブル、約51兆円もかかっている。

そうした中で、どのように「軍事支出の効率化」を図れるのか、経済学者としての手腕にも期待がかかっていると、BBCも報じている。

弾薬が圧倒的に足りない

── 効率化を図って、戦争を終結に持っていきたいのだろうか?

今回の人事で、プーチン氏は長期化を見据えており、経済学者を国防相にすることで、戦争に必要なカネを手にする道筋をつけたといえる。

また、ベロウソフ氏は軍人ではないが、経済閣僚の経験を生かして軍事産業にはくわしく、これまでもドローン製造のプロジェクトなどにも関わってきた。

プーチン氏が戦争というものを戦術だけではなく、カネや技術という観点から見ていることがわかる人事だ。
この人事と同時並行的に、ロシアはウクライナへの攻撃を強めている。

ロシア軍は、ウクライナ東部のハルキウ州に国境を越え侵入し、9つの集落を制圧したと発表している。
12日、ハルキウ州の村を取材した映像には住民たちが避難する様子も映されていた。

一方でウクライナ軍は、これまで提供された兵器はあっても、修理する部品や弾薬がないとの問題に直面している。

12日に撮影された東部ドネツクに展開するウクライナの戦車部隊の映像でも、ドイツから最新型の戦車を供与されたものの、「弾薬が圧倒的に足りない」と話している。

また映像では、「ドイツで整備されたもののため、ウクライナとの土壌の違いが考慮されておらず、車輪の損傷がひどく、スペアパーツも足りていない」と話している。

長期戦になり、ウクライナ側は部品や弾薬の供給と、それを支える資金が問題になっている。

アメリカでは4月、ウクライナへの610億ドル・9兆円超の軍事支援が、ようやく議会を通過したが、実際に戦場に反映されるまでには、あと1カ月程度かかるとみられている。
(「イット!」 5月14日放送より)

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