「日本一生み育てやすい県への挑戦」を掲げる宮崎県の県庁=宮崎市で2024年6月5日午後0時19分、下薗和仁撮影

 厚生労働省が5日に公表した2023年の人口動態統計で、宮崎県の合計特殊出生率が1・49と2年連続の全国2位となった。「日本一生み育てやすい県への挑戦」を掲げ、26年の同出生率1・8台を目指す同県は前年の1・63から0・14ポイント減の厳しい結果に危機感を強める。一方、同統計で人口10万人当たりの自殺死亡率は21・5で全国ワースト2となり、自殺対策も求められている。

 合計特殊出生率は、1人の女性が生涯に産む子どもの数に相当する。同県では05年の1・48を底に持ち直しの動きが見られたが、20年以降4年連続の低下となった。県こども政策課は「コロナ禍による婚姻数の落ち込みが出生数減少に影響している」と分析する。

 県は結婚や子育て支援に24年度当初予算で約13・5億円を計上。出生率向上と共に、婚姻数4500組以上、男性の育児休業取得率50%などの成果指標を設定している。

 同課は「少子化に歯止めがかかっていないことに強い危機感を持っている。結婚・子育て支援、若い世代が宮崎に残れるような雇用環境の整備がますます必要になる」と話している。

 県の少子化対策調査事業研究会会長を務め、若者の定住・Uターンの促進などの提言をとりまとめた宮崎大地域資源創成学部の杉山智行教授は「予想以上に少子化のペースが早い。県の少子化対策事業を推進していった上で、先行きが不透明な社会経済情勢が反映しているとみられるので、経済対策も同時にやっていく必要がある」と語った。

 一方、自殺死亡率はワースト3だった22年の20・4から1・1ポイント悪化した。県は25年に18・4の目標を掲げ、医療・介護関係者らを対象にした研修、電話相談体制の拡充などの対策事業を24年度から2年間実施する。県福祉保健課は「結果を重く受け止めている。目標に向かってできるかぎりの施策を打っていく」と話した。

 電話で悩み相談を受け付けるNPO法人国際ビフレンダーズ「宮崎自殺防止センター」の工藤智徳・研修部長(66)は「電話相談できない人もたくさんいる。一般の方々がゲートキーパー(命の門番)として声をかけられる世の中に変えていかなければならない。SOSの出し方などさらに裾野の広いメンタルヘルス教育が必要だ」と話した。【下薗和仁】

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