国内外からの観光客でにぎわう花見小路=京都市東山区(荻野好古撮影)

私道の通り抜けなどの行為を繰り返す観光客が増え、オーバーツーリズム(観光公害)が再燃しているとして、京都・祇園地区の地元協議会が今月、通り抜けの禁止を告げる高札を設置するとともに、違反者に罰金1万円を課すことを決めた。新型コロナウイルス禍の収束とともに迷惑行為の横行が目立つようになったといい、地元住民らを守る「抑止力」として強力なメッセージが必要と判断した。

設置される高札のイメージ画像(祇園町南側地区協議会提供)

今月2日、京都市東山区の祇園地区。メインストリートの花見小路では「私道での撮影禁止」と書かれた看板に目もくれず、周辺の脇道に立ち入って写真撮影を楽しむ観光客の姿があった。

花見小路は市道だが、一本入った狭い脇道は大半が私道。周辺には観光施設とは無関係の住宅なども立ち並ぶ。地元住民から「外国人が店と間違えて家に入ってきた」などの苦情が上がることも珍しくはないという。

こうした迷惑行為はコロナ禍前からも存在していた。四条通より南の景観保全などを行う祇園町南側地区協議会は約10年前に、花見小路沿いに迷惑行為を禁止する高札や張り紙を設置。さらに令和元年には私道での写真撮影を禁止した。ゴミのポイ捨てが減るなど高札の効果を実感する一方で、同協議会の太田磯一理事は「コロナ禍が明けて、またマナーが悪化しているようにも感じる」と明かす。

そこで協議会は地元住民からの強い要望を受け、新たに私道の通り抜けの禁止を日本語と英語で告げる高札を4月末ごろから順次設置することを決めた。無断で通行した場合には違反者から1万円を徴収するという内容も加え、マナー向上を図る。

協議会が特に問題視するのが芸舞妓(げいまいこ)への執拗(しつよう)なつきまといや写真撮影だ。私道に入った芸舞妓をそのまま追いかけたり、取り囲んだりするトラブルも確認されている。

私道には土産物店や飲食店はなく、太田理事は「(私道を)通行する観光客が増えても地元住民の利益につながらない。生活がしづらくなるだけだ」と語気を強める。

外国人観光客はどう思うのか。ギリシャから来たセオドラ・ジロプロスさん(21)は「地元の生活がよくなるいいアイデアだと思います。観光客は京都の地元の人を尊重すべきで、メインストリートが通れるなら問題ない。罰金も抑止力になると思う」と話した。(堀口明里、荻野好古)

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