日常生活で暑熱順化を取り入れられる場面の例(日本気象協会の熱中症対策サイト「熱中症ゼロへ」から)

昨年の日本の夏は史上最も暑かった。6~8月の平均気温は明治31(1898)年の統計開始以降で最も高く、各地で猛暑日日数の歴代最多を更新。酷暑はもはや地震や台風などと並ぶ「災害」に位置付けられ、命を守るための対策が必須な状況となっている。日本気象協会はこのほど、「地球沸騰化時代の熱中症対策」として、情報発信を開始。暑さが本格化する前の早めの対策着手を呼びかけている。

サウナも有効、高齢者には視覚で

同協会は平成25年から、熱中症予防に向けた情報発信を進める「熱中症ゼロへ」プロジェクトを開始。公式サイトで啓発を続けている。今年は「地球沸騰化時代の対策」をテーマに据え、4月1日から活動をスタートさせた。

コンテンツの一つ、「暑さへの備え」では、徐々に体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」の重要性を周知。通勤・通学(1駅分歩くなど30分程度のウオーキング)のほか、入浴(2日に1回程度、シャワーではなく湯につかる)やサウナなど、日常生活の中で取り入れられる順化シーンをまとめている。

毎年のように犠牲者が出る高齢者に向けては、「温度に対する感覚が弱くなって『暑い』と感じにくく、のどの渇きなども自覚しづらい」と指摘。室内に気温計や湿度計などを置き、視覚的に現状の環境の危険度を把握できるようにするといった対策を求めた。

ペットは散歩時に注意

獣医師の監修のもと、ペットについても言及しており、発汗による体温調節機能が備わっていない犬や猫は、暑熱順化ができないと指摘。散歩の際は、人間に比べ地面から近いところを歩くためより高温にさらされているとし、飼い主が地表面を触るなどして確認するよう呼びかけている。

酷暑は日本のみならず、世界規模で喫緊の課題となっており、昨年7月には国連が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と表明。NASA(アメリカ航空宇宙局)は今年1月、昨年の世界の平均気温が過去最高だったとの分析結果を公表した。

暑さの激甚化を背景に、同協会のサイトでは今年から新たに、一連の対策ポイントをまとめたイラスト動画も公開。より分かりやすい情報発信を進めており、今後さらに関連コンテンツを拡充させていくとしている。

暑熱順化、数日から2週間程度

同協会の予測(3月19日現在)によると、日本国内の今年4~6月の気温は、いずれも北日本で平年並みか高く、東日本や西日本、沖縄・奄美は平年より高い。熱中症の警戒度は、5月に関東甲信の一部などで「注意」ランク(熱中症指数に基づく)に達する日があるとする。

今週は週末ごろから、全国的に気温が20度を超える日が続く見込み。暑熱順化を得るまでの時間には個人差があり、数日から2週間程度かかるとされており、同協会は「サイトを通じ、熱中症に対する『防災意識』を高めてもらい、早め早めの対策につなげてほしい」としている。

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