気象庁は4月、「デジタルアメダス」のスマートフォン向けアプリを北海道を対象に先行公開した。デジタルアメダスは、アメダス(地域気象観測システム)の「点」の観測データなどを基に、国内を1キロ四方で区切った「面」の推定値を算出したもの。アプリを使えば、あらゆる地域の情報を手軽に入手でき、農業や漁業に役立つと期待されている。
気象庁によると、デジタルアメダスはアメダスや気象衛星ひまわり、気象レーダーの観測データに基づき、数値予報モデルや平年値を使ってスーパーコンピューターで計算している。アメダスの観測地点から離れた場所の気温や降水量を把握できるメリットがある。
アプリでは道内の任意の地点を選び、天気▽気温▽降水量▽日照時間▽積雪深▽降雪量▽地上風▽雷情報▽雨雲の動き――の推定値を知ることができる。発芽や実の成熟の目安となる「積算気温」や、「積算降雪量」を確認することもでき、人手不足が深刻化するなか、収穫や除雪作業の効率化につながると考えられている。海面水温や表層海流、波の高さなど海洋データも見ることができる。
全国のメッシュ(網目状の区画)データは既にインターネットで公開されているが、網羅的に情報を提供しているため、必要なデータを分かりやすく入手するのに適していない難点があった。気象庁はデジタルアメダスを幅広い産業の振興に役立てたい考えで、使いやすいアプリを開発するために、1次産業が盛んで降雪量も多い北海道で2023年度に実証実験を行い、この春にアプリを公開した。遅くとも30年までには全国でアプリを利用できるようにする。
6日には札幌市中央区でアプリの完成披露会と記者会見が開かれた。サーモン養殖で実証実験に参加した八雲町によると、海面養殖では水温が15度超になると魚が死ぬ恐れが高まり、5度未満だと餌への食いつきが悪くなるといい、「海に種苗(幼魚)を入れる時期や、水揚げのタイミングを知るのに役立った」と報告した。
一方、アプリの面データはあくまで推定値のため、実際の観測データとは誤差が生じる恐れがある。気象庁によると、谷や盆地などの地形や標高差があると誤差が生じやすいといい、「気象庁以外の観測データも積極的に活用しながら、精度を高めていきたい」としている。【石川勝義】
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