東雲堂の代表、高木雄三さん(左)と会長の高木美恵子さん=福岡市で2024年6月4日、田後真里撮影

 ハの字眉に下がり目のとぼけた表情。博多弁の軽妙な語り口とオチで笑わせる郷土芸能「博多にわか」の小道具「半面」をモチーフにした福岡銘菓は、博多駅の土産の第1号とされる。

 その銘菓は、優しい甘さの「二○加(にわか)煎餅(せんぺい)」だ。製造するのは東雲堂(福岡市博多区)。前身は菓子や日用品を扱う小さな商店で、九州初の鉄道駅として1889(明治22)年に開業した博多駅(現在の博多区博多駅前1の出来町公園あたり)のすぐ近くにあった。

 構内で饅頭(まんじゅう)やミカンを売っていた縁で、初代の高木喜七(きしち)さんは駅長から「博多らしい土産を」と相談を受けた。関西の瓦煎餅にヒントを得て、1906年、二〇加煎餅は誕生した。

福岡銘菓の二○加煎餅。箱売りには半面1枚のおまけがついている=福岡市で2024年6月13日、田後真里撮影

 以来100年を超えて愛される。新型コロナウイルス禍には、売り上げが9割落ちる苦境にあえいだが、もなかなど一部商品の製造を休止し、2022年に工場を建て替えて煎餅に絞るなどして危機を乗り越えた。

 新工場では1日約2万枚を製造。最新の映画やアニメとのコラボ、タイアップ商品も多数展開している。高木雄三代表(49)は「より多くの人に手に取ってもらえるよう、楽しい企画を実現していきたい」と話す。

 伝統の話芸は、博多仁和加(にわか)振興会が「博多町家ふるさと館」(博多区)で見学無料の実演を披露するなど市民らに親しまれ、受け継がれている。東雲堂会長の高木美恵子さん(76)は「博多の街も世の中も変わっていくけれど、文化を伝える煎餅を従業員で力を合わせて守っていきたい」とほほえんだ。【田後真里】

二○加煎餅

 小(縦5センチ、横8センチ)は3枚入りの4箱セットで648円。特大(縦10センチ、横17・5センチ)は3枚入り1箱で648円。基本の焼き印は下がり目、ウインクなど3種。紙製の半面1枚のおまけ付き。

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