「現代アートの収集家は『裸の王様』になっているのでは?」。11日に都内で開かれたイベント「それのどこが面白いんですか?〜藤原ヒロシさんとアート(仮)〜」(NIKKEI The STYLE主催、Art NIKKEI協力)は、藤原さんのこんな問いかけで始まった。20年以上前にバスキアの絵を約300万円で落札するなど気に入った作品を集めてきたという藤原さん。収集にあたっては「(評論家などの)評価の良い悪いではなく、自分の好き嫌いで見た方がいい」とこだわりを話した。
藤原さんは1980年代からクラブのDJとして活躍し、90年代に大流行した日本のストリートファッション界の代表的人物として大きな注目を浴びた。現在はfragment design(フラグメント・デザイン)を主宰し、ファッションや音楽などさまざまなジャンルでクリエーティブディレクションを手掛ける。
現代アートとの出合いは80年代で、アンディ・ウォーホルなどポップアートが入り口だった。ポップアートの定義については「単にきれいな作品をつくろうというのではなく、何か心に刺さる闇の部分があるからポップアートといえるのではないか」との見方を示した。
ロンドンやニューヨークを頻繁に訪ねる藤原さんには、アーティストとの交流エピソードも多い。イベントでは、英国の現代美術家、マーク・クインのアトリエを訪れた際の秘話を披露した。クインはスーパーモデルのケイト・モスを題材とした彫刻をちょうど制作中で、下書きのデッサンを気に入った藤原さんが「これは買えますか?」と聞いてみたところ、「かなり安く譲ってもらえた」という。
イベントの後半では、美術ジャーナリストの鈴木芳雄さんと藤原さんが対談した。鈴木さんは現代アートは英語で「contemporary art」ということから、「現代アートは同時代美術という感覚で捉えるといい」と指摘。「同時代に生まれるアートだから、問題を共有できる。何かを考える材料になることも大事」として、現代アートでは社会や政治、地球環境などへの姿勢も問われるとの考えを示した。
鈴木さんが「作品の魅力は(背景の)ストーリーによって増幅される。その2つをくっつけるのが自分の仕事だ」と話すと、藤原さんも「作品にしてもアーティストにしてもストーリーがあって、奥行きがないと興味がわかない」と同意していた。
平野麻理子
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