(6日、第106回全国高校野球選手権熊本大会1回戦芦北5―4玉名工)

 1点を追う九回裏、1死走者なしで玉名工の8番打者、富川太智さん(3年)が右打席に入ると、ベンチやスタンドから大きな声援が聞こえた。試合に出られていない仲間の顔も浮かんだ。

 「自分だけの打席じゃない。みんなの思いが寄せられた打席だ」。3球目を振り切ると二遊間への鋭い当たりに。相手の野手が好捕し、内野ゴロに終わったが一塁ベースを全力で駆け抜けた。

 この試合では控えとしてベンチでスタートした。点差が中盤に開いても「必ず追い付く」と声を出し続け、仲間を鼓舞した。「主将でも副主将でもないが、うちを引っ張ってくれる」と手嶋栄二監督が信頼を寄せる選手で、必ず出場の機会が来ると準備もしていた。

 「みんなで強くなっていったチーム。もっと試合がしたかった」。大好きな仲間たちのことを思い、声を詰まらせた。

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