(8日、高校野球秋田大会1回戦、能代松陽1―2新屋)
「自分らしくやればいい」。能代松陽の工藤浩輝選手(3年)の胸にはいつも父の言葉があった。
父は工藤明さん。4月に異動するまでチームの監督だった。前身の能代商時代を含め、春夏あわせて4回、甲子園に導いていた。
1年生の秋、ベンチ入りした。監督の息子ということで周囲の目が気になった。その言葉は、そんなとき、父にもらったものだった。
自身はベンチ入りのすぐ後の冬、右肩を痛めた。出場が決まった選抜大会は、開幕直前でアルプス席に回った。そこで応援するうちに気づく。「自分のことに目いっぱいでは、雰囲気を悪くする」
この心がけが今につながった。全力疾走に声かけ。全体のことを考え、引っ張っていくことが「自分らしさ」の表現なんだと。
七回2死で回ってきた打席。上位を打った時期もあるが、今は下位。単打でつなぐことを意識し、バットを振り切ってしぶとく中前に落とした。
父が監督の頃は、堅苦しくて不安も打ち明けられなかった。この3カ月間は違う。助言がすっと頭に入り、打球の追い方も気軽に聞いた。「想像もしていなかった生活でした」。この日のプレー、駆けつけてくれた父はどう見てくれただろう。(隈部康弘)
4兄弟の夢、かなわず
西目の主将、花橋隆生選手(3年)は4兄弟の末っ子。3人の兄も西目で野球をやっていた。
「進学のとき、ほかの学校も考えましたが、兄たちの無念もあるので」と、西目で甲子園を目指すことにこだわった。
すぐ上の歩武さんから「やれることをしっかりやってこい」と送り出されたこの日は、内野安打と中犠飛。チームは九回に1点差に詰め寄った。兄弟の夢は破れたが「最後まであきらめない、いいチームでした」。(隈部康弘)
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