(9日、第106回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 東京成徳大8―0北豊島工科)

 コールド負けまで、あとアウト一つ。七回表2死、北豊島工科の主将、馬場佑二郎(3年)は三塁コーチの位置から、空を見上げ、ゆっくりとグラウンドを見渡した。そして、笑った。

 「すごくきれいで。野球人生ももう少しで終わり。その景色を目に焼き付けておこうと思って」

 背番号「1」の主将。今年に入り、4人いた3年生は2人になった。春はメンバーが6人しかそろわず、連合チームを組んで都大会に出場した。

 「最後は単独(チーム)で終わりたい」

 全校生徒の前で必死に訴えた効果もあり、1年生4人が入部。最後の夏は10人で挑んだ。

 この日は先発したが、序盤から制球が定まらず、一回だけで3失点。三回にも1点を失い、3回4失点で降板。後輩にマウンドを託した。

 でも、三塁手に回ってからは、冷静さを取り戻した。「すばらしい」「いいね、いいね」。大きな声でチームをもり立てた。後輩が足をつった時には、ベンチから水を持って走った。攻撃の時は三塁コーチに入り、声を出した。「投げている時は後輩の声も聞こえなくて、1人だと思っていた。でも、みんながいるって気付いた」

 余裕がなかった試合前半と違い、後半はずっと楽しく、笑みがこぼれた。守っていても、三振しても。小学2年から始めた野球も、これで一区切りと決めている。最初で最後の神宮でのプレーだった。「人生最後の野球が神宮でできるなんて、なんてラッキーなんだろう。負けたけど、今はうれしい気持ちしかないかな」。また、笑った。=神宮(野田枝里子)

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