(10日、第106回全国高校野球選手権香川大会1回戦、寒川7―1高松北)

 父が野球部の監督をする高校に進み、親子鷹で頂点に挑んだ最後の夏だった。

 高松北の秦優作選手(3年)は幼いころから、高校野球の監督として指導する父敏博さん(62)の姿を見てきた。

 「父と一緒に甲子園で校歌を歌いたい」という思いで高松北を選び、懸命に練習に打ち込んだ。

 だが、夏の大会前、敏博さんに告げられた。「(ベンチで)4、5番手だから出番はないかもしれない」。それでも前を向き、どんな形でもチームを支えると決めた。

 負けられない理由があった。父は今大会で監督を勇退する。しかも、初戦の相手は昨夏の香川大会準々決勝で1点差で敗れた寒川だ。

 5点差の八回表、1死一、三塁のピンチで、秦選手はドリンクを手にベンチを飛び出した。マウンドでは直前で投手交代した妻鹿颯太選手(3年)が足をつっていた。

 「まだいけるよ」。左手で妻鹿選手の腰をポンッとたたいた。その後、妻鹿選手は相手打者を2人続けて遊ゴロに打ち取り、最少失点でピンチを切り抜けた。

 試合は1―7で敗れた。

 言われていたように、出場機会はなかった。秦選手は「今は悔しさで言葉が出ない」と話した。

 敏博監督は「選手として活躍できるところまではいけなかったけど、よくやってくれた」と息子をねぎらった。(和田翔太)

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