(14日、第106回全国高校野球選手権奈良大会2回戦 一条0―6橿原)
一条の遊撃手・平尾壮汰(3年)が七回表、4番手投手としてマウンドに上がった。投手の練習を始めたのは2週間前。緊張しながらも、打たせて取る投球で1イニングを無失点で切り抜けると、ほっとした表情でベンチに戻った。
投手としての役目は果たした。あとはこの日のために磨きをかけてきた打撃で貢献するだけだ。そう気持ちを切り替えた。
「お疲れ様っす!」。昨年の夏まで、全体練習が終わると一番早く帰るヤツだった。疲れるし、暑いし、打撃練習は成果がすぐに出るわけでもない。「そんなに打てないわけでもないし、まあいいかなと思って」
その意識が180度変わったのが昨秋だ。奈良県大会で五條にコールド負けし、自身も無安打。こんなに打てないのかと目が覚めた。仲間と100個の目標を立てて練習に取り組むことにした。
左打者として特に意識したのが、逆方向に強い打球を打つこと。監督に相談して、振り終わりのフォームを見直し、体のバランスを意識するようにした。
春の県大会は1点差で敗れたが、3安打でチームをもり立てた。もっともっと打ってチームの役に立ちたい。いつしか遅くまで残って練習をする常連メンバーになっていた。
この日は1番打者として4回打席に入ったが、シードの橿原を相手に気がはやり、凡打を重ねた。
「緊張で心がうわついてしまって、甘い球も見逃してしまった。もう少し自信がつくまで練習していれば……」。自分の成長を感じていたからこその言葉だった。(佐藤道隆)
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