(15日、第106回全国高校野球選手権宮城大会3回戦、仙台一4―7東北学院榴ケ岡)
「自分が絶対かえす」――。一挙5点を取られた直後の七回2死二塁。仙台一の小川郁夢主将(3年)は、相手投手の直球を左前に運ぶと「よっしゃー」と叫び、塁上で右手を突き上げた。
昨秋の東北大会後、主将の重圧から一時、部を離れた。当たり前のようにずっと続けていた野球を一切しない生活が、こんなに苦しかったとは。「やっぱり野球がしたい」。覚悟が決まった。
仙台一は今年の選抜大会では21世紀枠の候補に残ったが、選出されず、その後の春季県大会では2回戦負けを喫した。
「何も成し遂げてない、ただのチーム」。そう開き直り、夏に向け、挑戦者として奮起した。いつ負けても悔いが残らないよう、高いレベルに達しても「もう1回、もう1プレー」と最後までさらにその上を求め続けた。
この日は序盤リードするも、東北学院榴ケ岡の猛攻に一歩及ばなかった。それでも「勝つための全ての努力はしてきたので、悔いはない」。その目に、涙はなかった。
試合後、球場外で涙を流す選手たちに「よく頑張った」「お疲れ」と声をかけ続けた。千葉厚監督は「苦しかったことも悩んだこともあったと思うけど、よくやってくれた」と成長をたたえた。(岸めぐみ)
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