女子野球のトップ選手として長く活躍し、現在は福岡県のクラブチーム「九州ハニーズ」で選手兼コーチとして活動する川端友紀さんが第28回全国高校女子硬式野球選手権大会に出場する選手たちへエールを送った。

 ――2022年に福岡県でクラブチーム「九州ハニーズ」を立ち上げました。

 最初は球場もお借りできなかった。昨年、大野城市と連携協力協定を結んで応援していただけるようになって、平日の午前中を週2、3回は借りられるようになってからは、かなり練習ができるようになりました。選手たちはそれぞれ企業などとアスリート契約を結び、仕事もしています。本当に恵まれた形で野球ができています。

 私は選手兼任コーチだけでなく、チームの運営や広報、営業もしています。まだ勉強させていただくことが多いですが、企業の社長さんとお話しする機会をいただいて、貴重な経験をさせてもらっています。チームとして自立していきたいので、しっかり運営できるようにしていきたいです。

 ――女子プロ野球の誕生が決まった当時は、実業団でソフトボールをしていました。

 ソフトボールもすごく好きなスポーツで打ち込んできたんですけど、野球を一回離れて戻った時の新鮮さはすごく印象強かった。バットに当たる音、距離感の違い……。もっとやりたいという気持ちが一番でした。

 ――女子プロ野球選手になり、日本代表も経験して、18年末に引退を決断したこともありました。

 腰と肩のけががありました。私は練習量をこなしたいタイプなんですけど、練習を増やすと痛みにつながることが多く、量を抑えながら結果を出すことを考えるのがつらかった。3カ月くらいはボールも握らず、バットも降らず、もうやめるって決めて指導者をやろうか迷っていたんです。でも選手兼任コーチとして社会人の女子チーム(栃木)に声をかけていただき、体作りからやり直したら体の調子がすごく良くなった。また思いっきり野球できるようになりました。

 ――一度やめようと決めて下がったモチベーションは、どう戻しましたか。

 いろんな人とも話をして、やると決めたらやると決断したことが大きいです。お仕事もあるんですけど、基本的には野球をメインにさせてくれる恵まれた環境だったっていうのが1番ですかね。

 ――一度は現役引退をして、再び日本代表に戻ってきました。

 やっぱり女子野球界を良くしたい、野球を頑張っている女の子たちを知ってもらいたいって思いが強いのかな。特に、21年に女子プロ野球リーグがなくなった時は、有能な選手たちでも行くあてがなく引退した。女子野球の環境を作っていきたいと感じました。

 女子野球を応援してくださっている方は増えているのに、まだワールドカップの時期など単発的に盛り上がるだけ。継続的に応援してもらえないか、と。それで九州ハニーズを作りました。

 ――九州は神村学園や折尾愛真など女子高校野球が盛んです。

 神村学園は女子硬式野球部の全国第1号です。深いゆかりがある地なのに、なかなか知ってもらえない現状があります。ここ数年、九州の高校から九州ハニーズに入団した選手が3人ほどいます。「川端選手みたいになりたい」と話してくれる子もいて、うれしいですね。目標や憧れの存在みたいなチームにしたいなと思っていました。

 ――高校生と触れ合う機会が増えたことで心境の変化は。

 九州ハニーズを倒したい、という思いが高校生たちの中であるみたいです。なかなか倒せない相手がいるから頑張れる。負けたくない気持ちが、うまくなるためにすごく大事なんです。私も高校生の時、大人のチームと試合をやったときは気持ちが違いました。(相手が)高校生だからって言って手を抜いたプレーをするとお手本にもならないですし、逆に正々堂々と戦う。彼女たちの目標であり続けたいなと思います。

 ――3年前から選手権大会決勝が阪神甲子園球場で開催されています。

 甲子園で野球をすることより、そこを目指せることの方がうらやましい。私が子どもの頃、兄は「甲子園に出て、プロ野球選手になりたい」と明確な目標がありました。当時は女子プロ野球もなく、妹の私も野球をやっているけど、どこを目標にしたらいいんだろうって思っていた時期もありました。

 参加校が増えることは女子野球が発展していっている証しでもある。競技人口もそれに伴って増えてほしい。でも、その先の目標がないと言われることもあります。女子野球がどこのゴールに行くのが一番なのか。まだ探している途中なんですけど、これという目標ができてほしいので、自分も頑張っています。

 ――野球に打ち込む選手に伝えたいことは。

 今後の新しい女子野球を作っていくのは、今の高校生や中学生、つまり、あなたたちです。甲子園に行きたい、レギュラーになって活躍したいなど、いろんな目標があると思う。それでも高校生活は今しか使えない3年間だと思って、野球を楽しむ気持ちだけは忘れないでほしいな。やるからにはてっぺんを目指してほしい。だけど、試合になったら失敗を恐れず。精いっぱい、後悔のないようにしてほしいです。(聞き手・室田賢)

 かわばた・ゆき 1989年生まれ、大阪出身。小学校で野球を始める。2009年から女子プロ野球の京都、埼玉などを経て、22年にクラブチーム「九州ハニーズ」を設立し、選手兼コーチ。女子ワールドカップ日本代表共同主将。兄はプロ野球ヤクルトの川端慎吾。

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