(17日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会2回戦、岐阜城北7―5関商工) 九回表、関商工は驚異的な粘りで4点を奪って同点に追いつく。だがその裏、悲劇が待っていた。

 マウンドには内田颯希投手(3年)。2死後、四球に続いて迎えたのは岐阜城北の4番太田陽民選手(2年)。投じたスライダーが甘く入り、サヨナラ本塁打を浴びた。打球が吸い込まれた左翼席を、いつまでも見つめていた。

 劣勢の七回から登板した。「あの場面で投げさせてもらえる。自分の投球で流れを呼び込もうと思いました」。直球とスライダーをテンポ良く投げ込む。本塁打を打たれるまで無安打に封じた。

 江崎大輔監督は「内田が相手の打線を止めた。もう一度勝つチャンスをくれた。誰も彼を責められません」と話した。

 春以降、フォームを崩した。「もう投手は無理かと思った」ほど深刻だったが、4月に就任した阪口慶三特別顧問(前大垣日大監督)の指導を受け再起。初戦の池田戦では先発し、7回3分の2を被安打1・無失点と安定した投球術を見せた。

 阪口顧問からは常日頃、「部員全員が私の孫。私の血を受け継いでいるから自信を持ってプレーしろ」と言われているという。「その言葉を意識しながら投げました」

 第1シードで臨んだこの大会。だが、孫たちは「おじいちゃん」を主戦場だった甲子園に連れて行くことはできなかった。内田投手はこれまでの指導を胸に、「先生のおかげでこの夏を投げられました。ありがとうございました。そして、負けてすみませんでした、と伝えたいです」と話した。(高原敦)

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