(18日、第106回全国高校野球選手権大阪大会3回戦 大商大堺3―2清教学園)
六回裏、押し出しで1点を与え、なおも2死満塁。三塁を守る清教学園の浅田泰輝選手(3年)は「ボールでもいい、思いっきり腕振れ!」と投手に声をかけた。
心臓は早鐘を打っていたけど、頭は冷静。「俺がいいプレーしたる」と思っていたところに、高くバウンドした打球が飛んできた。うまくさばき、三塁を踏んでアウト。ピンチを切り抜けた。
昨春だったら、考えられないことだ。
打撃の良さを買われていたが、要所での守備のミスが多かった。エラーしたり打てなかったりすると、ぶすっとした表情が出てしまう。
高田淳史監督に「エラーとか思い通りにならない時こそ、どうするかが一番大事やぞ」と諭された。先輩も同級生も後輩もいる前で。
言われた恥ずかしさ、そして何より悔しくて、情けない。人目をはばからず号泣した。
高田監督に「自分の弱さを受け止めることから成長は始まる。朝、早く来られるか」と声をかけられた。監督との特訓が始まった。
朝、学校で高田監督に30分、ノックを打ってもらう。「期待に応えたい」と取り組んだ。繰り返し取り組み、おかげで守備に自信を持てるようになった。
この試合、打者としては初回、先頭打者として安打を放ち、七回には安打でつないだ。
最終回、2死で打席が回ってきた。
ショートゴロ。一塁にヘッドスライディング――。相手ベンチから大歓声がわき上がる。その場でうずくまった。
汗と涙と砂でぐちゃぐちゃになった顔。「魂のノックを打ってくれた監督にも、一緒に戦ってくれた仲間にも、感謝しかない。楽しかった」と、白い歯をのぞかせた。(西晃奈)
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