西武の野村大には、毎試合ひそかな目標がある。「息子が起きている第2打席までに1本打ちたい」。埼玉と福岡。今月から離れて暮らすことになった生後5カ月の長男へ、テレビ越しに活躍する姿を見せたいのだ。

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 古巣ソフトバンクとの一戦は午後6時に始まった。まだ日が落ちきっていない一回、1死二塁、初球をフルスイングした。「打った瞬間、入ったと思った」。左翼席への今季1号2ランは、新天地での初本塁打。古巣のファンはもちろん、長男の目にも、きっと映っただろう。

 東京・早稲田実高出身。6年目の今季、首位をひた走るソフトバンクでは、1軍で2試合の出場にとどまっていた。7月にトレードで加入した西武は最下位。それでも、プロ野球選手として「必要とされたことがうれしい。1点でも多く打点を稼ぎたい」と奮い立った。

 高校時代は1学年上の日本ハム・清宮と中軸を組み、長打力を売りにした。プロ入り後は「簡単にホームランは打てない。生き残るため」と状況に応じた打撃にも考えを巡らせるようになった。

 7日の移籍後初出場では犠飛を放った。西武での初打点のボールは持ち帰らなかった。「それぐらいで満足してはいけない」と、会心の一打への思いは持ち続けた。

 この夜のホームランボールは受け取るつもりだ。もちろん、「息子にあげたい」。夜9時すぎ、夢の中であろう我が子を思い、お立ち台で笑った。(平田瑛美)

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