(20日、第106回全国高校野球選手権神奈川大会準々決勝 武相10―1横浜隼人) 

 横浜隼人のベスト8進出は8年ぶり。じりじりと暑い快晴の空の下、ぎっしりと埋まったスタンドで、一斉に青と黄のメガホンが揺れた。

 エース沼井伶穏(3年)は直球で押していく投球が持ち味で、今年6月の練習試合では最速150キロを投げた。プロ野球のスカウトからも注目されている。

 この日は初回でいきなり4点を先制され、なんとか味方が1点を返してくれた。三回以降は変化球を増やしたが、調子の良かった武相打線につかまり、5回まで投げて降板。結果は1―10のコールド負け。沼井は「まっすぐを狙われている感じがした。実力が全て出せたかというとそうではない」と振り返った。

 2年生の冬、先生から「30メートルのキャッチボールをしなさい」とアドバイスされ、ミットを突き破るイメージで練習を重ねるうち「何かをつかめた」。以来、球速が上がった。自らの投球を撮影した動画を見て、理想とのずれを修正してきた。

 ナイジェリア人の父と、日本人の母の間に生まれた。父からは、祖国では格差が深刻で、安全できれいな水や食べ物さえもなく、一日を生きるのに必死な人たちがいると教わった。

 「自分が生きている環境は当たり前じゃない。プロ野球選手になって、夢を持つ子どもたちをサポートしたい」

 今日の悔しい思いは、次のステージで晴らすつもりだ。(稲葉有紗)

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