(25日、第106回全国高校野球選手権香川大会準々決勝 英明7―0三本松、7回コールド)

 「自分から乱れてしまい、チームのテンポを悪くしてしまった」

 英明打線に一挙5点を奪われた5回表、三本松のエース、田村亘将(こうすけ)投手(3年)は落胆を隠せなかった。

 今大会の準決勝までの3試合すべてで先発し、三本松を4強に押し上げた。だが、経験のない状況に、マウンドに駆け寄った主将・川崎大聖捕手(3年)に悔しさをにじませた。

 どう声をかけるか、川崎捕手は冷静だった。

 「打線もヒットが出ている。気にせず放って来い」

 田村投手と川崎捕手は対照的なバッテリーだ。田村投手が感情を前面に出す一方、川崎捕手は冷静な判断が持ち味だ。

 兵庫県の中学出身の川崎捕手と地元出身の田村投手。2人がバッテリーを組み始めたのは、秋の1年生大会のときだ。

 その後、田村選手のけがや、川崎選手のサードへのコンバートもあり、一時的にバッテリーを解消したが、昨秋から再び組み始めた。そのバッテリーで臨んだ春の県大会で今大会の第1シードの高松商と善戦することで、自信につながった。

 チームは冬休み期間中、地元の引田漁港で出荷作業の手伝いやゴミ捨てなどのアルバイトをして遠征費を稼いだ。「厳しい環境の中で働くことで、困難から逃げない強さを身につけてほしい」という日下広太監督の方針からで、そんなユニークな取り組みもチームを勢いづけた。

 昨夏の王者、英明の壁は高かったが、2人の表情は晴れやかだった。

 川崎捕手は「大会を通して成長していく姿が頼もしかった。エースらしい投球をしてくれて本当にありがとう」。田村投手は「川崎のおかげで救われた。自分1人ではここまで来られなかった」。2人の距離がさらに縮まった気がした。(和田翔太)

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