(25日、第106回全国高校野球選手権鳥取大会決勝 鳥取城北5―4米子松蔭)

 決勝まで細かな継投策で勝ち進んできた米子松蔭。最後を託されたのはやはり、主将のエース山本裕司投手(3年)だった。塩塚尚人監督に迷いはなかった。「山本なら大丈夫だ」。八回から再びマウンドに上がった。

 先発した山本投手は、いったん降板する四回まで、毎回安打を打たれながらも仲間の好守にも支えられ、無失点でしのいだ。四回表には2人の走者を進める絶妙な犠打で好機を広げ、先取点につなげた。目指し続けた「全員で戦う試合」を形作れた。

 主将としてプレッシャーはあった。昨秋の県大会を制したが、中国大会は8強止まりで選抜には届かなかった。今春の県大会決勝は、この日と同じ相手の鳥取城北に敗れた。勝ちたいのに勝ちきれない。どうすればいいのか悩んだ。

 それでも仲間はついてきてくれた。仲間に支えられ、人間としても成長できたと思っている。仲間を信じ、九回のピンチでも動じてはいなかった。1点を返され、なお無死満塁で、鋭い牽制(けんせい)球で三塁走者を刺した。

 だが、相手に傾いた流れは止められなかった。最後の瞬間はよく覚えていない。歓喜の鳥取城北選手らを横目に無言でマウンドを降りた。

 目標は甲子園ではなく「日本一」だった。その目標は、後輩たちに託す。(奥平真也)

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