この仲間たちと一日でも長く野球を。その思いを胸に、力いっぱい投げて、打って、走って、捕って。60校52チームが参加した第106回全国高校野球選手権熊本大会は25日、熊本工が優勝して幕を閉じた。熱戦が続いた大会を振り返る。

 今大会で、鮮烈な印象を残したのは天草工だった。熊本二との初戦では七回2死まで無安打に抑えられながらも逆転勝ちすると、次戦でも第3シードの文徳に八回裏で4点を挙げて逆転して勢いに乗り、45年ぶりの4強入りを果たした。

 「やったー」「ヤバい」「すまん」。表情豊かに伸び伸びとプレーする選手たちの姿は、見る人を魅了した。監督が話すように「高校野球って楽しい」と感じさせてくれた。

 千原台との2回戦で、延長で2度ビハインドを追い付いてみせた熊本西や、熊本国府との準々決勝で6点差を八、九回で同点に持ち込んだ専大熊本など「最後の一球まであきらめない」思いを体現したチームも多かった。

 少子化の影響などによる各校の野球部員減で、連合チームで出場する学校も増えた。御船・矢部・甲佐・湧心館・松橋・八代農の6校連合は1回戦で有力チームの開新に0-13の五回コールドで敗れたが、3本の安打を記録した。点差が開いても手を緩めることなく、全力で戦い続けた開新の姿勢もすがすがしかった。

 大会屈指と評判のエース左腕が体調不良で登板できない中、3回戦で熊本に延長十一回逆転サヨナラ勝ちを収めるなどして8強入りしたルーテル学院からは、チームが一丸となったときの強さを感じた。

 やはり8強入りした熊本商と有明は、エースの力投が目立ったが、堅い守りや走塁技術の高さからも、日々の厳しい鍛錬が垣間見えた。

 九州学院の選手たちは、走者がリードを大胆に大きく取って相手バッテリーのリズムを崩し、俊足の左打者がハーフスイングで緩いゴロを打って内野安打にした。準決勝で熊本工に敗れはしたが、モットーの「凡事徹底」を高いレベルのプレーに昇華していた。

 準優勝の熊本国府は、ずば抜けた制球力を持つ左右2投手と鍛え抜かれた守備に加えて、打撃力も高め、好投手を擁する芦北、翔陽など好チームを倒して勝ち上がった。

 決勝を含めた高い緊張がかかる場面でも、大胆なプレーを鮮やかに披露する。昨秋に九州大会を制して以後、神宮大会、春の甲子園を戦って得た経験値を示した。

 熊本工は昨秋以後、公式戦での早期敗退が続き、シード権獲得さえ危ぶまれた。5月のNHK旗大会で優勝し「優しすぎる選手が多いのが最大の課題」(監督談)だったチームが、ようやく波に乗り始めた。

 制球力抜群の2年生エースが粘り強く抑えている間に、打線に火がつき得点するパターンで勝ち上がった。準決勝では守りのミスが連鎖して先取点を失う展開になったが、そこから立て直して逆転する精神力の強さも見せた。

 守備力や機動力、各打者の投手への対応能力の高さ。熊本大会で示した実力を、甲子園でも発揮して、熊本の高校野球のレベルの高さを全国に示して欲しい。(吉田啓)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。