(27日、第106回全国高校野球選手権東東京大会準決勝 帝京13―3東京=五回コールド)
第1シードの帝京が四回以降毎回得点、計18安打の猛攻で東京高校を突き放し、10年ぶりの決勝進出を決めた。スランプを脱した一番打者の表西(おもにし)優志(3年)が、チームに勢いを与えた。
帝京打線が、東京高校の好投手、永見光太郎(3年)を攻略できるかが鍵だった。
突破口を作ったのは、表西だ。一回表、先頭で打席に入ると2球目をセンターに打ち返した。その後、二塁への盗塁も決め、一気に得点機を作った。「ホームランを狙って打てば、詰まってもヒットになる」と、永見の変化球を狙って、強く振り抜くことを心がけた。
3回も安打で出塁。四回は2点適時打を放ち、序盤均衡していた試合の流れを大きく引き寄せた。終わってみれば、5打数4安打3盗塁と、東京バッテリーを翻弄(ほんろう)した。「チームに迷惑をかけていたが、今日は結果につながった」
「高校野球発祥の地」として知られる大阪府豊中市出身。実業団のソフトボール部員だった母(49)にすすめられ、野球を始めた。関西の複数の高校からスカウトを受ける中、当時、帝京の監督だった前田三夫氏に請われた。親元を離れて、東京から甲子園を目指すことを決めた。
チーム一の俊足で一番中堅手としてレギュラーをつかんだが、今大会は沈黙。準々決勝まで14打数2安打、打率1割台。大会前までは好調だっただけに、「なんで打てないんだろう」と悩んだ。
それでも金田優哉監督は、「なんとかきっかけをつかんでほしい。いつか打てる」と、一番での起用を続けた。準決勝までの3日間、コーチからつきっきりの指導を受け、肩にバットを寝かせるフォームから立てるフォームに変えた。
準決勝、監督の期待に応え、輝きを取り戻した。試合後、「自分だけ打っていない状況が長かった」と安堵(あんど)の表情を見せた。「圧倒」をテーマに掲げるチームにあって、目指すのは「全力疾走で勢いづける一番打者」。決勝を目前に頼れる一番打者が戻ってきた。=神宮(中村英一郎)
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