(27日、第106回全国高校野球選手権東東京大会準決勝 帝京13―3東京 八回コールド)
今大会注目の好投手、東京高校の永見光太郎(3年)は、マウンドで思わず苦笑いを浮かべた。0―3で迎えた五回表無死二、三塁。帝京の5番打者に3点本塁打を浴びた場面だ。
「打球が飛びすぎ。やっぱり帝京の打者はすごいなって」
三回まで無失点に抑えていたが四回崩れ、3失点。以降、毎回点を奪われ、13失点。「相手打者が全てで上だった」。チームを初の4強まで導いた絶対的エースは、そう認めざるをえなかった。
春の都大会で二松学舎大付に1失点完投勝利をあげてから一躍、注目を浴びるようになった。「あの試合で自信がついた。強気な投球ができるようになった」
今大会、期待にたがわぬ投球を見せ続けた。初戦から全試合で先発し、立教池袋との4回戦では、7回参考記録ながら無安打無得点試合を記録。5回戦では昨夏の覇者、共栄学園を1安打完封に抑えた。初の準決勝、全国屈指の強打の帝京打線に永見が通用するのか、問われる試合でもあった。
だが、この日、マウンドにいつもの永見の姿はなかった。
4日前の準々決勝で139球を投げ抜いたばかり。下半身を中心に体の疲れが抜けていなかった。捕手の森田恭輔(3年)は「試合前から明らかに直球が伸びていなかった」。バッテリーで話し合い、これまでの直球主体から一転、変化球主体で臨むことにした。
序盤、毎回安打を浴びながらも要所を締めたが、中盤からその変化球を狙われた。五回に浴びた一発も内角低めに決まったはず、の変化球だった。
自慢の直球は疲労の影響で130キロ台がやっと。帝京にしてみれば、打ちごろの速さだ。もう、投げる球がなかった。「六回あたりから一気にしんどくなった」。六、七、八回に計7失点。コールド負けだった。
それでも、最後までマウンドに立ち続けた。「体もしんどかったし、暑かったけど、自分がエースなので」。森田のサインにほぼ首を振らず、疲労を一切顔にも出さず。ひたむきにただ腕を振り続けた。
だが、試合が終わると、涙が止まらなかった。「最後にこういう負けになり、仲間に申し訳なくて」。チームは初の4強。東京高校、そして永見光太郎は今夏、確かな足跡を残した。「ここまで来られたのは本当によかった」=神宮(吉村駿)
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